山田養蜂場運営の研究拠点「山田養蜂場 健康科学研究所」が発信する、情報サイトです。ミツバチの恵み、自然の恵みについて、予防医学と環境共生の視点から研究を進めています。
暑い季節には、食欲が衰えたり、体力を消耗しやすいことなどから、免疫力が低下しがちです。夏風邪などひかないように注意しましょう。
この研究では、ブラジル産プロポリスの飲用によって風邪の治りを早めることができるかを検証するとともに、風邪の自覚症状の程度が変化するか、59人のデータをとって確かめました。
20~70歳の男女59人を2つのグループに分け、一方のグループにはプロポリスエキスを含むカプセルを、もう一方にはプロポリスを含まないプラセボ(※)を、60日間飲用してもらいました。
その間、毎日日誌をつけてもらい、風邪の自覚症状の有無と、自覚症状がある場合は症状の程度を記入してもらいました。
風邪が治るまでの日数は、プロポリス飲用グループはプラセボ飲用グループよりも平均1.3日短くなりました。
また、「体のだるさ」の自覚症状も、プロポリス飲用グループのほうが軽くなることが確認されました。
この試験結果から、プロポリスが風邪の治りを早めること、症状を軽減してQOL(生活の質)を高める可能性が示されました。
※プラセボは、思い込みによる作用をなくすために用いられる偽薬や試験食。ここで紹介している研究では、見た目はプロポリスが入ったものと変わらないが、プロポリスを含んでいない、対照となる試験品のこと。
風邪やインフルエンザの原因はウイルスです。これまで、ブラジル産プロポリスがウイルスの活性を抑えることや、風邪の回復を早めるなどの報告はありましたが、そのメカニズムの詳細は不明でした。そこで培養細胞を用いて、その仕組みを調べる試験が行われました。
ウイルスは自力で増殖することができないため、他の生物の細胞(宿
主(しゅくしゅ)細胞)に感染して増殖します。これに対抗するため、宿主細胞はI型インターフェロンを増加させます。しかし、I型インターフェロンが増えすぎると、細胞が過剰な炎症反応を起こし、細胞自身が傷ついてしまいます。
この試験では、ブラジル産プロポリスが過剰な炎症反応にどう作用するかを調べました。
①ヒトの細胞にブラジル産プロポリスエキスを添加して1時間おく。
②人工的に合成したRNAというウイルス感染の元となる物質を①に入れ、感染を疑似的に再現。
③抗ウイルス機構に関わるI型インターフェロンなどのタンパク質の量を測定。
炎症によって現れるタンパク質の増加が抑えられていました。また、細胞の傷つく程度も軽減されていました。
この試験結果から、ブラジル産プロポリスが細胞の炎症を抑え、保護することで、インフルエンザなどのウイルス性疾患を予防または症状を軽減する可能性が示されました。
ピロリ菌は胃の粘膜に棲(す)みつき、慢性的な炎症をもたらして、胃潰瘍(かいよう)や胃がんの原因になると考えられています。50代以上の日本人は、半数以上がピロリ菌に感染していると推定されています。胃の健康を守るためには、ピロリ菌の除菌が大切です。
除菌法の一つに、ピロリ菌が生息しやすい環境をつくっているウレアーゼ(※)という酵素を阻害する方法があります。そこで、プロポリスにウ
レアーゼを阻害する働きがあるかを検証しました。
ウレアーゼと尿素を混ぜたときに発生するアンモニアを測定し、ウレアーゼの阻害作用を確かめました。ブラジル産プロポリス、中国産プロポリス、比較対象として胃潰瘍の治療やピロリ菌除菌の補助に使用されるオメプラゾールについて、同じ方法で測定しました。
下のグラフからわかるように、ウレアーゼを最も強力に阻害したのはブラジル産プロポリスでした。
また、中国産プロポリスと、治療薬に用いられるオメプラゾールは、同程度の阻害力を持つことがわかりました。
この試験結果から、ブラジル産プロポリスは、ウレアーゼを強力に阻害することによってピロリ菌が棲息しにくい環境をつくり、胃の健康を守る可能性が示されました。
冷たいものを飲食したり、歯ブラシがあたるだけでキーンとした鋭い痛みが走る「知覚過敏」は、20~40代の女性に多くみられる症状です。歯磨きで力を入れ過ぎてエナメル質を削ってしまうなど、何らかの原因でエナメル質の内側の象牙(ぞうげ)質が露出することで起こるとされています。
症状を緩和させるために歯磨き剤が使用されることがあります。そこで、プロポリスや、よく利用されている歯磨き剤の知覚過敏に対する効果を調べました。
20~40代の知覚過敏患者120人を30人ずつ4グループに分け、それぞれ、①蒸留水のみ(対照)、② リカルデント(※)入り、③フッ化ナトリウム入り、④プロポリス入りの歯磨き剤、を使用して歯磨きをしてもらいました。歯の表面が荒れないように注意して60秒間磨く方法で、3ヵ月間続けてもらいました。
知覚過敏症状が日を追ってどのように変化するかを、①エアジェットスコア(歯の表面に1秒間空気を当てたときの痛みの大きさ)、②触覚刺激スコア(歯の表面を棒の先端でなぞったときの痛みの大きさ)の2種類で測定しました。
どのグループも日を追うごとに知覚過敏の症状が軽減しました。その中で最も症状が軽減されたのは、プロポリス入りの歯磨き剤を使用したグループでした。
また、歯磨きの日数を重ねるほど症状が軽減されていることから、プロポリス入り歯磨き剤の継続的な使用が有効であることがわかりました。