山田養蜂場運営の研究拠点「みつばち健康科学研究所」が発信する、情報サイトです。ミツバチの恵み、自然の恵みについて、予防医学と環境共生の視点から研究を進めています。

“ロコモティブシンドローム”を予防して軽やかな毎日を

あなたとあなたの大切な人の健康を守る「予防医学」。
ここでは、日々の生活で実践できる、
「予防医学」を紹介します。

「運動不足」が招く深刻な問題

近頃、階段の昇り降りで膝が痛くなったり、何もないところでつまずくようになったり、同じ体勢を続けると腰にくることはありませんか?「もう歳だから仕方ないのかな……」と、あきらめているとしたら、まだ早すぎます。
足を骨折していたり、腰にヘルニアがあるのであれば無理は禁物ですが、体の痛みや動きにくさをそのままにしていると、あなたは将来、今よりももっと不自由な思いをすることになるかもしれません。

現代の日本では、車や電車、バスを容易に利用できるようになり、とても便利になりました。
一方、徒歩で移動する機会は少なくなり、日常生活における歩数の平均値は、男性7,321歩、女性6,267歩で、「健康日本21」の目標値である男性9,200歩、女性8,300歩に達していないとの調査結果もあります(平成19年度国民健康・栄養調査)。運動不足は筋肉や骨、関節の衰えに直結し、メダボリックシンドローム、さらに関節、骨の状態の悪化という悪循環におちいるため、できるだけ早く運動習慣の改善に取り組むことで、将来が大きく変わります。

1994年、日本整形外科学会は健康づくりにおける骨と関節の重要性を広く訴えるために、10月8日を「骨と関節の日」にすることを提唱しました。
しかし、その約10年後の2005年には、骨や関節、筋肉、それらを動かす脳や神経など、体をスムーズに動かす「運動器」における疾患が高齢者において急増。公的介護保険においても、2000年に218万人であった要介護認定者(認知症や、衰弱、骨折が原因の寝たきりなどにより介護が必要と認定された人)が、2010年には478万人と2倍以上に達して、深刻な問題となっています。

健康長寿のための新たな概念「ロコモティブシンドローム」

先述のような国内の状況を受け、2007年10月、日本整形外科学会は、“運動器の障害により要介護になる危険の高い状態”を、「運動器」を意味する「ロコモティブ」という言葉を使って「ロコモティブシンドローム」と命名し、適度な運動を励行する活動を開始しました。超高齢社会となった日本において、運動器をいつまでも健康に保つ重要性を啓発することが目的です。
ロコモティブシンドロームは高齢者だけの問題ではありません。運動器の老化は40代から始まるため、その予防には、高齢者のみならず働き盛りの時期からロコモティブシンドロームに対処することが肝心です。そこで日本整形科学会は、運動器の健康を、誰でもすぐできる簡単な自己点検法や予防法を開発。ロコモティブシンドロームの予防に国を挙げて取り組むよう提案しました。さらに2010年には、医療関係者に向けた診療ガイドも作成されています。

ロコモティブシンドロームの早期発見

「ロコモティブシンドローム」は決して他人事ではなく、私たち一人ひとりが向き合っていかなければならない課題です。
では、ロコモティブシンドロームを早く見つけるにはどうしたら良いでしょう?まずは、日本整形外科学会が作成した簡単な7つの質問からなる「ロコチェック」をご覧下さい。

ロコチェック

もし、ひとつでも当てはまれば、ロコモ注意(!)です。ロコモティブトレーニング(以下、「ロコトレ」)で、毎日少しずつでも改善していきましょう。また、ロコモティブシンドロームは運動器の障害の程度により、①軽症(歩行が自力で可能)、②中等症(歩行に杖、歩行器などの解除が必要)、③重症(歩行に人の介助が必要、または歩けない)に分けられていますので、ご自身の程度を知った上でロコトレを行いましょう。

ロコトレとは

ロコトレの基本は、「運動器の局所治療」と「歩行機能改善」の2つです。ロコトレの重要な運動として「開眼片脚立ち」と「スクワット」 が推奨されています。ただし、前述の重症度などにあわせて、程よく、効果的なメニューを作ることが大切です。

ロコトレの重要な運動として「開眼片脚立ち」と「スクワット」 が推奨されています

具体的には、足が悪い場合は机に手をついて片脚立ちをしたり、一人では立てないものの椅子に座ることが出来る場合には、椅子に腰掛け、テーブルに両手をついて腰を浮かせた状態で5秒から10秒止したりするなど、少しずつアレンジすると良いでしょう。
また、単に黙々と続けるよりも、歌を歌いながら片足立ちやスクワットを行うと、同じトレーニングでも楽しく続けられるかもしれません。
さらにロコトレとしては、ウオーキングやジョギング、水中運動、太極拳といったトレーニングや各種のスポーツも勧められています。

食事からロコモティブシンドロームを防ぐ

食生活の面においても、ロコモティブシンドロームの予防のためにできることがあります。例えば、骨を丈夫にするためにはカルシウムが必要ですが、我が国ではカルシウム不足が問題になっています。本来、成人では毎日600 mgのカルシウムが必要にもかかわらず、実際には、平均540 ㎎程度という統計結果もあります。カルシウムの摂取推奨量の目安としては、1本200mlの牛乳2?3本に相当します。もちろん、カルシウムを多く含む魚やチーズなどもおすすめです。カルシウム以外にも、関節のスムーズな動きにはカニやエビなどに含まれるグルコサミンが役立つと言われています。
一生に渡って骨や関節の健康を支えるためには、運動を行なうとともに、栄養学的にサポートすることも大切なのです。

ロコトレの効果はいかに?

ある施設で行われたロコトレの効果に関する興味深い検討があります。対象者は、要支援?要介護1に認定された一号保険者(65歳以上)のうち、ロコモティブシンドロームと診断された方、132名です。理学療法士の指導のもとで6か月以上ロコトレを行い、2回目の要介護度注)の判定を行ったところ、ロコトレ前の内訳は要支援1の方は77名、要支援2の方は47名、要介護1の方は8名でしたが、ロコトレ後の介護判定では、改善は36名(27%)、維持72名(55%)、悪化24名(18%)で、平成20年に行われた認定支援ネットワークの調査よりも好成績が得られ、適切なメニューでロコトレを継続することによって、体の機能の維持・改善を期待できることが証明されました。

日頃からトレーニングを続けることは決して容易ではありません。知らず知らずのうちに運動不足になり、骨や関節は思ったより早く歳をとっているかもしれません。
そこで提案です!立ち上がるときに「よっこらしょ」と声をかけるようになったら、ロコトレを始めてみませんか?
いつまでも軽やかな気持ちで歩くためにも、日頃から楽しく運動することをおすすめします。

注)要介護の判定・・・その人が、生活上どの程度介護を必要としているかによって、分類・度合が認定される。介護にかかる時間等判定基準は多岐にわたる。
要支援1,2‐1人でほぼ生活できるが、多少の介助等が必要
要介護1~5‐日常生活を送る上での基本的動作(歩く、寝る、食べる、入浴等)を一人で行うことができない場合

参考資料