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所長からのメッセージ

第1章 健康情報の「科学的信頼性」のレベル ~ヒト試験から試験管内試験まで~

テレビや雑誌でよく見かける体験談。実は、科学的には信頼性の認められない情報です。なぜなら、体験談とは個人の感想であり、その効果が“思い込み”によるものである可能性、あるいは、食事や環境の変化といった、人によって異なる生活条件の下で偶然現れたものである可能性を否定することができないからです。
では、「科学的に信頼性の高い情報」とは、どのようなものでしょうか。それは、偶然得られたものではなく、また、意図的に作られたものでもない試験結果に基づいた情報のことです。同じ実施条件で行った試験ならば、誰が何度行っても同じ結果が再現されるはずです。

試験にはさまざまな実施レベルがあります。「ヒトでの有効性」という観点では、科学的信頼性は、ヒト試験が最も高く、次いで、 動物試験、試験管内試験の順に低くなります。
特に、健康食品素材の健康情報では、“ヒトにおける有効性”が一つの重要なポイントとなります。

試験管内試験(in vitro 試験)とは、試験管の中など、体外で単純化された条件の下で行われた実験のことです。具体的には、細胞、細菌やウイルス、核酸(DNAやRNA)、タンパク質、生体から取り出した組織などに、試験したい物質を加えることで、どのような影響が現れるかを評価します。これにより、作用メカニズムを検討することができます。

例えば、高血圧の発症に関わる酵素に、有用と考えられるある成分を加え、酵素活性を測定し、その物質に高血圧を予防・治療する効果があるかどうかを推定する、といった具合です。
試験管内試験には、短期間で再現性の高い結果が得られるという利点があります。しかし、この試験により活性があると分かった物質でも、多様な生体成分と複雑な生体反応が絡み合った私たちの体内においても同様に有効性を発揮するとは限りませんので、試験管内試験の結果だけでは、結論付けることができません。

健康の観点から科学的信頼性のレベルが最も高いヒト試験(臨床試験)とは、試験したい物質をヒトに与えて、その効果や安全性を評価する試験です。つまり、ヒトに対して効果があるのかどうかは、ヒトで試験しなければ実際のところはわからないのです。
このとき、試験したい物質をただやみくもに与えるのではなく、被験者の属性(年齢、性別、体重、BMI、アレルギーや肌悩み等の評価したい内容に関係する条件等々)やその試験グループ分け、試験期間、投与量などの試験条件を、厳密に設定します。もちろん、被験者には試験の目的や内容を充分に説明し、倫理的に同意を得た上で試験を行います。

これにより、有効性などの科学データがヒトで得られ、客観的に有効かどうかを検討することができます。
しかし、ヒト試験で統計的に有効な結果が得られても、個人の性別や年齢、体質等によって影響の受け易さが異なるため、必ずしもすべての人に効果があるとは限らないことに注意が必要です。

さあ、あなたが新聞や雑誌、テレビなどで目にしている「健康情報」は、果たしてどのような試験によって裏付けられたものでしょうか。試験管内試験か、動物試験か、ヒト試験か。

それとも、試験の裏付けのない体験談のみでしょうか。その点に注目して、身近にある「健康情報」を審査してみましょう。

第1章のまとめ:

  • 体験談に、科学的信頼性はない
  • 健康情報の裏付けとして、最も科学的信頼性が高いのは、ヒト試験である
  • 科学的信頼性=結果の再現性

監修:みつばち健康科学研究所 所長 橋本健

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