山田養蜂場運営の研究拠点「みつばち健康科学研究所」が発信する、情報サイトです。ミツバチの恵み、自然の恵みについて、予防医学と環境共生の視点から研究を進めています。

予防医学と食生活改善

あなたとあなたの大切な人の健康を守る「予防医学」。
ここでは、日々の生活で実践できる、
「予防医学」を紹介します。

世界一の長寿国日本、今後の課題

長寿国日本を支えてきた食文化、そして未来の健康日本を支える「食」とは一体どのようなものなのでしょうか?その答えを求めて、多くの様々な研究が重ねられ、今の日本には、数え切れないほどの情報があります。今回は、一人ひとりに合った答えを探し出す道標として、諸説を交えながら考えたいと思います。

長寿食とは?

長寿食とは言い換えれば、長く生きていくための「食」になります。あえて「寿」にこだわると、人として幸せに生きることを支えてくれるQOL(生活の質:Quality of life)をも満たす「食」でなければなりません。
では、どのような「食」が求められるのでしょうか?その実践にはひとり一人の体質やライフスタイル目標にあった「食」が必要です。例えば「成長期から老年期までライフステージにあわせた健康維持のための食」、「疾病予防につながる食」、「疾病治癒を支える食」に分けて捉える必要があります。ライフステージについてさらに分けて考えてみると、①心身の成長を促す子どもの成長期、②活動量が著しく増加する青年期、③運動量が減りカロリーオーバーになりがちな中高年期、そして、④エネルギー消費は減っても実はタンパク質をはじめとした種々の栄養素をしっかり摂りたい老年期、さらに、⑤女性においては、子どものためにより多くの栄養素を摂取しなければならない妊娠期や授乳期など、それぞれの時期によりメニューは異なります。また、自分自身の日々の運動量やライフスタイルを知り、自分自身が本当に必要な栄養とそれを含む食品を知ることも求められます。
つまり、理想を言えば、一人ひとりに合った「テーラーメイド」の食がその人の「長寿食」になるわけです。
もちろん、食事療法中は別として、家族の食卓で一人一人のメニューを変えることは難しいでしょう。従って、まずは自分の健康のあり方を意識し、「長寿食」について学び、日々のメニューを考え、さらに、盛りつけや調味料を加減することで、カロリーや栄養素のバランスを自らフレキシブルに対応できる「食」作りのスキルが必要となってくるのです。

長寿の原点を探る

長寿国日本の原点を、食の面から探る上で是非とも知っておきたい4名の諸家の研究や提言を紹介します。

(1)「生活習慣病は生活習慣で治す」
社団法人生命科学振興会 理事長 渡邊昌先生(元 独立行政法人 国立健康・栄養研究所 理事長)

生活習慣病は生活習慣で治す

渡邊昌先生は、アメリカの国策「ヘルシーピープル 2000」に注目し、がんや生活習慣病の予防には食習慣の改善が必要不可欠であることを述べています。
さらに、自らの例を挙げ、かつて 2 型糖尿病にかかったとき、血糖コントロールのために、厳密な食事療法と週 3 回以上プールで泳ぐ運動療法で、見事に健康を取り戻した経験談を紹介しています。具体的には 1 日 1600 kcal の食事を守った結果、 2 型糖尿病のみならず、高脂血症や肝機能もすべて正常に戻り、薬が不要になったそうです。さらに、マラソンやロードレースにもチャレンジし、大変さを乗り越えゴールに着いたときの達成感の素晴らしさを述べています。
このように、ある疾患にかかったとき、治療を受けることは大切ですが、薬に頼りすぎるのではなく、根本的に自らの健康を取り戻すために、そして、再びその疾患にかからないようにするための工夫や予防を続けることこそが、健康回復のためには必要不可欠なのです。どんなに効き目のある2 型糖尿病の薬を使っていても、カロリーを考えずに好きなものを食べたら、元も子もありません。自らをコントロールすることはとても大変なことかもしれませんが、健康を取り戻し、薬なしで日常を暮らせるようになったときの喜びは、まさに感無量と言えます。

(2)「伝統食が実は健康食である」
武庫川女子大学 国際健康開発研究所所長 兼 京都大学 名誉教授 家森幸男先生

我々の祖先は、科学的な検証をせずとも、長い歴史の中で体に良い食材や調理方法を取捨選択し、害となるものを淘汰し、自らの健康を守ってきました。これは、まさに人類の叡智に他なりません。家森先生は、日本や中国等で多く摂取される大豆に注目され、世界各国での食文化の調査、疫学調査および様々な基礎研究を通して、含有成分イソフラボンのがんや生活習慣病に対する予防効果を解き明かしています。「食」の改善に際しても温故知新、先達の知恵をまず学ぶことから始めたいものです。

伝統食が実は健康食である

(3) 「長寿遺伝子を食事で活性化」
順天堂大学大学院加齢制御医学講座 教授 白澤卓二先生

長寿遺伝子とは、老化や寿命をコントロールする遺伝子群を指します。例えば、代謝や呼吸で中心的役割を担う調節タンパク質を作る遺伝子群に変異が起こると、代謝速度が減少したり、活性酸素の生成が少なくなることにより、老化の進行が緩やかになると考えられています。
長寿遺伝子を活性化させる策の一つとして、白澤先生は、野菜に含まれる抗酸化物質、フィトケミカルの中でも、特にポリフェノール類の摂取を薦めています。抗酸化物質は、人の健康維持に悪影響を与える酸化物質を排除する上で大切な働きをする物質です。中でも、赤ワインなどに含まれるレスベラトール、タマネギの皮やモロヘイヤに含まれるケルセチンなどのポリフェノールは、長寿遺伝子を活性化させることが知られるようになりました。すなわち、これらの食品の摂取により、酸化ストレスが軽減し、長寿遺伝子が活性化して体内で十分な効果を発揮し、健康維持につながります。逆に酸化ストレスを増やす行動には、過度のストレス、喫煙、多量の飲酒、紫外線および有害な化学物質などがあり、極力避けるべきです。白澤教授は、食品成分、運動および摂取カロリーが長寿遺伝子に与える影響やそのメカニズム等の多くの研究を行われ、その成果が注目されています。

長寿遺伝子を食事で活性化

(4)「若いときからの養生が生涯の美の秘訣」
日本未病医学研究センター 所長 劉(りゅう)影(いん)先生

劉先生は、「日本人に合った中医学」を研究され、漢方や食の観点から健康と美の秘訣を数々提案されています。中医学でいう“養生”とは,健康と美を携えて幸せな生活を送るための知恵を指し、全ての年齢で必要なことと語られています。
中医学の考え方に、“心と体は一体”、”医食同源”というものがあります。その意味は、心を若々しく保てば、体も若く保て、適切な食で体を癒せば、医者に診てもらうくらい効果が高いということです。

若いときからの養生が生涯の美の秘訣

若いうちから養生を積み重ねると、女性の美しさに磨きをかけることができます。特に、女性は、月経、妊娠、出産、閉経などでホルモンバランスをはじめ体調が大きく変わるため、若さと美しさを保つためには、年齢や体調に応じた体のこまめなケアが欠かせません。また、女性には、瘀(お)血(けつ)は大敵です。瘀血とは、血液循環が悪くなる状態のことで、冷え症、月経不順、不妊等、様々な婦人病や皮膚の老化などの原因とされています。
これらの基本に加え、20代では、生涯の健康と美を決める重要な時期なので、無理なダイエットはむしろ大敵であり、30~40代では、仕事や育児などで生活は不規則になることも多いため、無理せず心身の休養をとり、更年期では前向きに生活を楽しみ、初老期では心身とも自立した生活の心がけが、養生のポイントと解説されています。女性が若く美しく健康長寿を過ごすための劉先生の取り組みに、注目が集まっています。

心身の健康を守るための「食」の実践に向けて

近年、インターネットなどの普及により、世の中には「食」の情報があふれています。「健康食品」で検索するとサプリメントをはじめ数えきれないほどの商品が見つかりますが、それぞれの内容や信頼性を見極め、今の自分の健康のために何を選択するべきか、情報整理力と判断力が不可欠となっています。
家族で食卓を囲む一家団欒の場では、種々の食の素材について触れながら、食や健康の大切さ、一日の出来事などを語り合って食事を楽しむ時間が、今の日本に求められているのかもしれません。
日頃から疾病を予防し、健康長寿の充実した人生にするためには、「医食同源」に例えられる毎日の「食」を、今一度振り返る必要があるのではないでしょうか。今日からのあなた自身の食改善が、未来の日本の健康を支える礎にもなります。

次回は、健康維持のために必要な運動、疾病予防に役立つ運動とその例を紹介する予定です。

参考資料