ミツバチが、自らの巣を守るために利用している
防御壁“プロポリス”。
ここでは、その様々な機能について、
科学的な根拠を基に説明します。
風邪は、主にウイルスが喉や鼻腔に感染したことによって炎症を起こしている状態を指します。原因となるウイルスは多種多様で、ウイルス以外にも細菌が原因となって発症することもあるため、ひとつの原因をブロックすれば風邪をひかない、もしくは風邪が治るというものではありません。
一度感染した病原体に対しては、体内に免疫が備わるため、再度、感染しても症状があらわれないか、症状があらわれたとしても軽微なもので収まることがほとんどです。しかし、風邪の原因となるウイルスや細菌が多様であることから、一度感染して獲得した免疫があっても、次に別種のウイルスや細菌が感染した場合に、繰り返し風邪をひいてしまうのです。
流行期の冬には、多くの人が風邪をひくため、厚生労働省が発表した国民医療費の概況によると、風邪の治療にかかる医療費は4000億円※1にも上ります。さらに仕事の効率低下、欠勤、早退などの労働損失も含めると社会全体への影響は決して少なくはありません。近年では夏でも、冷房による冷えや乾燥、プールや人混みが原因とされる「夏風邪」対策も注目されることが増えており、風邪は一年を通じて気をつけたい疾病の一つと言えるでしょう。
そのため、風邪を予防することや、発症しても症状を軽微に抑えることが求められます。口、鼻からのウイルスや細菌の侵入を遮断するマスクの着用はもちろんのこと、うがいや手洗いを徹底することも大切です。
また、人びとの生活の知恵として、風邪の予防や治療に役立つとされる食品も伝承されてきました。このような食品の例として、生姜や蜂蜜大根などが挙げられます。これらに豊富に含まれるビタミンCやカロチンなどの成分が免疫を活性化し、ウイルスや細菌を速やかに撃退するものとも考えられていますが、この作用が科学的に研究されたことはなく、本当に食品そのものが発揮している効果なのか、“効果があるに違いない”という思い込みによるものなのかは、正確には明らかになっていません。
プロポリスも、そうした風邪の治療や予防に役立つと言われている食品のひとつです。実際に、山田養蜂場のブラジル産プロポリス商品をご使用になったお客様から、“風邪をひきにくくなった”、“風邪をひいても長引かなくなった”などのお声が寄せられています。このプロポリスの働きには、プロポリスの抗ウイルス活性や抗炎症活性が関係していると考えられますが、これらは培養細胞や動物を用いた実験により確かめられた活性であり、ヒトの風邪に対する作用については、他の食品と同様、科学的に信頼性の高い方法では調べられていませんでした。
山田養蜂場ではこれまでに、ヒト試験によって、プロポリスが酸化ストレスを軽くしたり、スギ花粉症の症状を和らげたりすることを明らかにしてきました。そこで今回は、プロポリスの風邪に対する作用について調べるため、当社のグループ会社である免疫分析研究センターと共同で、ヒトを対象としたプロポリスの飲用試験を行いました。
ヒト試験を行うに当たって、採用したのが「プラセボ対照二重盲検試験」という試験方法です。これは被験者を複数のグループに分け、試験食の内容や用量を変えるなどして、作用のあらわれ方の違いを調べるという手法なのですが、ここでポイントとなるのが、プロポリスなどの有効成分を含まない試験食(プラセボ)を摂るグループがいるということです。
プロポリスのように何らかの効果が期待される食品を摂ると、実際には効果がないものであっても、効果があらわれているように感じることがあるため、プロポリスそのものの働きを正確に調べるためには、このような精神的な影響を排除できる試験を計画しなければなりません。有効成分を含まない試験食のグループを作り、有効成分を含む試験食のグループにあらわれた作用と比較することで、精神的な影響を排除した、食品そのものの効果を調べられるというわけです。もちろん、被験者には、有効成分を摂ったのか、摂らなかったのかは知らせませんし、試験結果を分析する研究者にも知らせないようにして、研究者の予断も排除できるようにしています。
今回の、風邪に対するプロポリスの作用を調べる試験では、成人男女59名を30名と29名の2つのグループに分け、一方のグループ(以下、“プロポリス群”)にはブラジル産プロポリスエキス450㎎を含むソフトカプセルを、もう一方のグループ(以下、“プラセボ群”)にはプロポリスエキスを含まないソフトカプセルを、それぞれ60日間継続して飲用(試験期間:2008年1月28日-4月28日)してもらいました。試験期間中、被験者には風邪の自覚症状(体のだるさ、喉の痛み、頭痛、腹痛、下痢、吐き気など)の有無に加え、自覚症状がある場合は、その程度を軽症の“1”から重症の“5”までの点数で評価して、毎日日誌に付けてもらい、試験終了後に詳細な分析を行いました。
その結果、風邪が治るまでの日数が、プラセボ群では平均3.3日であったのに対して、プロポリス群では平均2.0日と、プロポリスを摂ることで風邪が治るまでの日数が短くなることが確かめられました※2(図1)。
また、症状についてもプロポリスを飲用することで大幅に軽減することが確かめられました。図2は被験者が体のだるさを点数化した結果を示したものですが、プラセボ群に比べ、プロポリス群は大幅に軽減している※2ことが見て取れるでしょう。
こうして、ブラジル産プロポリスの継続的な飲用は、体のだるさを軽減し、風邪の治りを早めることが科学的に確かめられました。風邪が流行する時期や地域でプロポリスを摂れば、風邪によって損なわれるQOL(生活の質)を向上させられることが期待できそうです。