プロポリスのスギ花粉症軽減作用

ミツバチが、自らの巣を守るために利用している
防御壁“プロポリス”。
ここでは、その様々な機能について、
科学的な根拠を基に説明します。

ローヤルゼリーの食事

ブラジル産プロポリスに花粉症を軽くする効果があることをヒトで初めて確認!

増加する花粉症患者

近年、スギ花粉症の患者数は増加の一途をたどっており、今や日本人の3~4人に1人は花粉症を患っているといわれています※1。花粉が飛散する春先には、多くの人が鼻水、くしゃみ、目のかゆみといった花粉症特有の症状に悩まされることになります。

スギ花粉症は、体がスギ花粉をアレルゲン(アレルギーを起させる物質)と認識して、それを排除しようと起こる防衛反応ですので、その予防は「花粉に近づかないこと」が第一です。例えば、外出時にメガネやマスクを装着するだけでも、鼻や喉に入る花粉の量を半分以下に抑えることができますし、帰宅時には、玄関で花粉を払い落とし、手洗い、うがい、洗顔をすることで、自宅に持ち込む花粉を減らすことができます。そのほか、花粉のつきにくい素材の服を選んだり、ストレスや不規則な生活が症状を悪化させるとされていますので、ストレスの少ない規則正しい生活を送ることも有効です。

現在の花粉症の治療は、薬物治療が主体となっており、症状や重症度に応じて、抗ヒスタミン薬、ステロイド薬などが処方されます。しかし、これらの薬は効果的に症状を抑えてくれる一方で、眠気や喉の渇きといった副作用を引き起こすことが問題視されています。日本アレルギー協会が2010年に行った調査では、花粉症治療薬を服用している人の6割以上がインペアード・パフォーマンス(集中力や作業効率の低下)を訴えています。そのため、5割以上の人が副作用を懸念して仕事や勉強前に薬の服用を控えた経験があるという結果が発表されました※2

薬物治療の他にも様々な治療方法が行われており、近年では、体に少しずつ花粉エキスを注入し、花粉に対する免疫を獲得させてアレルギー反応を抑える免疫療法(減感作療法)という治療が行われています。ただし、一定の効果は得られることとが明らかになっているものの、2年間以上に渡る長期の治療が求められ、通院を続けることが難しいという問題があります。このような背景から、現在、安全で手軽に摂ることができる食品が、花粉症を改善するための手段として注目されています。

これまでにも食品の花粉症軽減作用に関する研究が行われてきましたが、その多くが培養細胞や実験動物を用いて作用の有無を判定するもので、ヒトに対する作用を信頼性の高い手法を用いて評価した研究はほとんどありません。そこで、鳥取大学医学部と山田養蜂場の研究グループは、抗アレルギー作用が報告されているプロポリスに花粉症を軽減させる作用があるかどうか確かめるヒト臨床研究を行いました。

花粉症患者の症状を軽減したプロポリス

試験は、スギ花粉症に対するプロポリスの予防作用を調べるために、スギ花粉の飛散前から飛散時期にかけて行われました。軽度のスギ花粉症と診断された被験者30人を、プロポリスを含む錠剤を摂取する群(プロポリス群)と、プロポリスを含まない錠剤(プラセボ錠)を摂取する群(プラセボ群)に分け、花粉が飛散する前の1月から12週間に渡り、それぞれの試験食を摂取してもらいました。

その間、被験者には、症状のあらわれ方や、使用した花粉症治療薬の種類や用量などを毎日記録してもらい、12週間後に各群の違いを比較することで、プロポリスに花粉症を軽減する作用があるかどうかを調べました。この研究では、ブラジルのミナスジェライス州で採集された、アレクリンを起源植物とするプロポリスが用いられ、プロポリス群はこのプロポリスのエキスを1日300 mg摂取しました。

また、この臨床研究は、プロポリス錠とプラセボ錠の見た目を同じにして被験者だけではなく、被験者と接して症状を調べる観察者にも、被験者がプロポリス錠とプラセボ錠のどちらを摂取しているかわからないようにして行いました。この試験方法を「二重盲検法」といいます。二重盲検法は、被験者、観察者ともに「プロポリスを摂っているから良い効果が現れるはず」という先入観を持たないことによって、より客観的な試験結果が得られるため、その成果は信頼性が高いと評価されます。

薬剤の使用の有無

試験の結果、プロポリス群はプラセボ群よりも花粉症治療薬を使用した人が少なかったことがわかりました。また、治療薬を使用した人においても、治療薬の使用頻度や強度を有意に軽減させたことが示されました※3

1日300 mg以上がプロポリス摂取の目安

スギ花粉が飛散してから花粉症が発症するまでの日数

では、1日にどのくらいの量を目安に摂取するのが良いのでしょうか。
研究グループは、上に述べた試験の翌年に、スギ花粉症軽減作用を示す摂取目安量を調べる試験を行いました。この試験では、被験者80名を、1日450 mg摂取する高用量群、300 mg摂取する中用量群、150 mg摂取する低用量群、プラセボ錠を摂取するプラセボ群の4群に分け、前年同様、花粉飛散前の1月から12週間摂取してもらい、花粉症の症状を調べました。

試験の結果、高用量群(450 mg/日)、中用量群(300 mg/日)では、花粉が飛散し始めてから花粉症を発症するまでの日数が、プラセボ群と比べて長くなり、発症を遅らせることができました。さらに、高用量群は鼻づまりの程度が有意に軽くなったことも観察されました。また、どの群においても、副作用などの有害事象は見られず、安心して摂取できることも示されました※4

プロポリスの花粉症軽減作用のメカニズムとは?

花粉症発生メカニズム(肥満細胞からのロイコトリエンとヒスタミンの遊離)とプロポリス成分の作用機序

さらに、プロポリスが花粉症を軽減するメカニズムに関する研究も進められています。

山田養蜂場の研究グループでは、花粉症の症状の原因となるヒスタミンやロイコトリエンなどの炎症関連物質に対するプロポリスの作用や、プロポリスに含まれるどの成分が作用を示すのかを調べる研究を行いました。

先述のとおり、花粉症は鼻や喉の粘膜に付着した花粉を取り除き、それ以上侵入させないようにするためのアレルギー反応が過剰に起こっている状態です。その過程において、花粉をキャッチした抗体が免疫をつかさどる細胞の一種である肥満細胞に信号を送り、肥満細胞が炎症関連物質であるロイコトリエンを放出すると鼻づまりが、ヒスタミンを放出するとくしゃみや鼻水が引き起こされます。

同研究グループは、スギ花粉症患者の血液から得た免疫をつかさどる細胞(白血球など)にスギ花粉とプロポリスを同時に与え、肥満細胞での炎症関連物質の放出がどれだけ抑えられるかを調べました。

その結果、プロポリスはロイコトリエンの放出を抑えることが確認されました。また、ヒスタミンについては高濃度のプロポリスによって抑えることも確かめられました。さらに、プロポリスに含まれる成分のうち、アルテピリンCやクリフォリンなどの桂皮酸誘導体ケンフェライドやケンフェロールなどのフラボノイドがロイコトリエンの放出を抑えていることも突き止めました※5

このように、ヒトを対象とした臨床研究により、プロポリスに花粉症を軽減させ、治療薬の使用を低減させる作用があることが科学的に示され、そのメカニズムも徐々に明らかになりつつあります。プロポリスは食品であるため、薬のように速やかに症状を緩和させるほどの作用はありませんが、治療薬を減らすことにより、患者が副作用の悩みから少しでも解放され、快適な生活を送ることができれば、非常に有意義なことです。いつもの予防対策にプラスして、プロポリスを取り入れてみてはいかがでしょうか。

参考文献
※1
2008年 全国疫学調査
※2
2010年スギ花粉飛散時期における、花粉症患者を対象とした意識調査
※3
応用薬理75(56),103-108(2008)
※4
応用薬理76(34),71-77(2009)
※5
Bioorg. Med. Chem., 18, 151-157(2010)

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