山田養蜂場運営の研究拠点「山田養蜂場 健康科学研究所」が発信する、情報サイトです。ミツバチの恵み、自然の恵みについて、予防医学と環境共生の視点から研究を進めています。

新たなミツバチからの恵み「はちみつ乳酸菌」を発見しました。ミツバチの食べ物である、ローヤルゼリー、花粉荷、蜂パン、ミツバチの蜜胃や腸の中まで徹底的に調べ、採取した微生物サンプルの数は1,000種類以上。その中から細菌314株、うち、乳酸菌137株を確認することができました。また、それらの乳酸菌のいくつかは、ミツバチのおなかの中にも存在していることもわかりました。現在、それら一つ一つについて、様々な有用性を調べています。

意外と知られていない腸の働き

意外と知られていない腸の働き

「腸の働き」とは何でしょうか?
まず思い浮かぶのは「消化・吸収・排泄」だと思います。
では、ヒトが食べ物を食べた際の流れを見てみましょう。
口で細かく噛み砕かれた食物は、唾液や胃液の酵素である程度消化されます。
その後、食物は小腸に運ばれ、すい液や胆汁・腸液の酵素によりさらに消化されるとともに、必要な栄養素が吸収されます。
この際に、栄養素のほとんどを吸収するのが「小腸」、残った食べ物のカスを排出するために、水分を吸収し便にするのが「大腸」の働きです。

しかし、腸の働きはこれだけではありません。

免疫力を高めるには?その秘密は「腸」にあった。

免疫力を高めるには?その秘密は「腸」にあった。

先ほど述べたように、腸は栄養の吸収に関わっている臓器の一つです。
さらに、「腸は最大の免疫器官」と言われるように、身体の免疫にも関わっています。

料理をする際に、食材を水やお湯で洗い、衛生面には気を付けられていると思いますが、もちろんそれだけでは取りきれない病原菌や毒素もあります。
そういった病原菌や毒素は、気づかないうちに、食べ物と共に腸内に侵入しているのです。

では、腸はどのようにして毎日のように取り込まれる病原菌や毒素から、私たちの体を守っているのでしょうか?

体を守る力「免疫力」

体を守る力「免疫力」

「免疫」とは、異物を除去し、病気から身を守る“生体防御”の仕組みであり、この仕組みは、胸腺や骨髄で作られる「免疫細胞」の働きにより成り立っています。

この「免疫細胞」は身体の様々な場所で働き、病原菌から身を守っていますが、特に“腸”に多く、全体の60~70%が集中しています。
これが、「腸」が体内で最大の免疫器官であると言われる由縁です。
また、「腸」は“第二の脳”とも呼ばれており、安心感や幸福感に関わるホルモンが、最も多く存在する器官としても知られています。

「消化・吸収・排出」だけでなく、「免疫」にも深く関わっている「腸」は、身体を守る重要な器官であり、健康に保つためにメンテナンスを日々行うことが大切です。

しかし、どんなに健康に気をつけていても、年齢や生活環境、ストレスなどにより、この免疫機能は、低下することが、世界の研究により明らかにされています。

では、「腸」の健康を保つためには、どうしたらいいのでしょうか?

腸に存在する様々な腸内細菌

腸に存在する様々な腸内細菌

ヒトの体には、500~1,000種類の腸内細菌が住んでいます。
腸内細菌の一部はふん便で排出されますが、ふん便の中の細菌数から腸内の細菌数を算出すると、およそ100兆個以上の腸内細菌が存在する計算になります。

腸内細菌は、「善玉菌」「悪玉菌」「日和見菌」の大きく3つに分類することができ、それぞれが異なる働きをしています。
善玉菌は消化吸収を助けたり、免疫を高めるなど、健康維持や老化防止に関わる菌で、代表的なものに乳酸菌やビフィズス菌があります。

一方、悪玉菌は増殖すると、食中毒や大腸炎など、からだに悪い影響を及ぼすとされ、代表的なものにウェルシュ菌、ブドウ球菌、大腸菌があり、病気の引き金となったり老化を促進するなど健康を害します。

日和見菌は勢力の強い方に味方する性質を持っており、健康なときはおとなしくしていますが、からだが弱ると、悪玉菌の味方をし、腸内で悪い働きをする菌です。代表的なものにバクテロイデス・ユウバクラリウム・連鎖球菌などがあります。
腸内細菌のバランスは、食生活の乱れ、運送不足、喫煙や過度の飲酒によるストレスなど、生活習慣の影響を受け、年齢とともに変化します。

それぞれの年代の細菌数の割合は異なりますが、特に、高齢になると、善玉菌の「乳酸菌」や「ビフィズス菌」が減少する傾向があり、年齢を重ねると「悪玉菌」の割合が多くなることがわかっています。

「悪玉菌」が増え、優勢に働くと、「日和見菌」が味方することもあり、免疫力が低下し、アレルギーや肌荒れ、頭痛などを発症するリスクも高まります。

つまり、“健康な身体”“整った肌”をいつまでも保つためには、年齢を重ねても「乳酸菌」や「ビフィズス菌」の割合が多い、健康な腸内細菌バランスを維持することが重要なのです。

乳酸菌が優位な腸内細菌バランスをつくるには?

乳酸菌が優位な腸内細菌バランスをつくるには?

健康な腸内細菌バランスをつくるためのポイントは、
「肉食に偏らない食事」「毎日野菜を摂取する」「食物繊維を摂る」「適度な運動」「ストレス発散」など、様々ありますが、これらに加えて、“発酵食品”を摂ることが重要です。

実は、この発酵食品には善玉菌である「乳酸菌」が豊富に含まれているものが多いのです。

高温多湿の日本では、昔から、この環境を活かして、様々な発酵食品を作り出し、食生活に取り入れてきました。
▼代表的な発酵食品
●醤油 ●味噌 ●醸造酢 ●ぬか漬け ●鰹節 ●納豆 ●ふなずし

これらの発酵食品には、『乳酸菌』が豊富に含まれており、これらを毎日摂ることで、善玉菌を増やすことができます。

このように、見てみると、日本は、発酵食に特に馴染みが深いと感じられるのではないでしょうか?

これらの発酵食品を上手に活用して、少しずつでもいいので、毎日続けてたべることが、乳酸菌優位の腸内バランスをつくる第一歩となります。

最近では「塩麹」などもブームになっており、サラダのドレッシング替わりに使われる方やお料理の下味として使われる方も増えてきていますね。
毎朝、簡単に!という方にはヨーグルトもおすすめです!
ぜひ食生活に「発酵食品」を取り入れてはいかがでしょうか?

ミツバチの体内にも乳酸菌が?!

ミツバチの体内にも乳酸菌が?!

さて、ここまでお話ししてきた、身体を守ってくれる「乳酸菌」ですが、この「乳酸菌」が活躍する「免疫システム」は、ヒトに特有のものではありません。

ヒトに近い存在である哺乳類はもちろん、なんと、節足動物であるミツバチの体内にも存在し、ミツバチの身体を守っているのです。

働き蜂は、花粉に蜂蜜を加えて発酵させた「蜂パン(bee bread)」を主食としています。

ローヤルゼリーの研究をはじめ、人々の健康に役立てるために、みつばち産品の研究に力を注いてきた山田養蜂場は、「ミツバチがつくる“発酵食品”である「蜂パン」に微生物の特別な力が働いており、ミツバチの健康に役立っているのではないか、さらには人の健康にも役立つのではないか」と考え、2008年よりミツバチ由来の微生物に関する研究をスタートさせました。

ミツバチの食べ物である、ローヤルゼリー、花粉荷、蜂パン、ミツバチの蜜胃を徹底的に調べ、採取した微生物サンプルの数は、1,000種類以上。
その中から細菌314株、うち、乳酸菌137株を確認することができました。
また、それらの乳酸菌のいくつかは、蜂蜜やミツバチの腸の中にも存在していることがわかっています。
そして、それらの人の健康に対する有用性が徐々に明らかになってきました。

はちみつ乳酸菌の「免疫力」に関する研究データ

はちみつ乳酸菌が免疫力を高める可能性

IgA抗体 (以下IgA) は免疫力の指標の1つであり、ウイルスや細菌の感染の防御に重要な役割を果たしています。IgAは血液や唾液、鼻汁などの体液に存在し、鼻やのど、消化管などの外界と接する粘膜において、病原体に結合して無毒化する働きがあります。
ローヤルゼリー、花粉荷、蜂パン、ミツバチの蜜胃から採取した乳酸菌137株から、IgAを指標に1株を選抜し、下記の試験を行いました。

1分間あたりの唾液IgAの分泌量 (以下IgA分泌速度) が少ない人に、はちみつ乳酸菌を4週間飲んでもらい、飲用前と飲用後に、IgA分泌速度を調べました。

その結果、はちみつ乳酸菌を飲用すると、飲用前と比べてIgA分泌速度が約2倍に増えました。

はちみつ乳酸菌のIgA分泌速度改善作用

J Appl Microbiol. 2015;119(3):818-826.)

はちみつ乳酸菌の「便通・腸内環境改善」に関する研究データ

はちみつ乳酸菌が便通や腸内環境を改善する可能性

(1)便秘ぎみの女性に、はちみつ乳酸菌を含まないプラセボ、または、はちみつ乳酸菌 (低用量、中用量、高用量) を各2週間ずつ飲んでもらい、はちみつ乳酸菌の飲用量を徐々に増やす試験を行いました。飲用前と各用量の飲用後、全ての用量の飲用終了後に、排便状況や腸内細菌を調べました。

①排便状況
はちみつ乳酸菌を飲用すると、どの飲用量でも、飲用前と比べて排便回数が増えました。また、増えた人の割合は60%以上でした。

②腸内細菌
増えると腸に悪影響を及ぼす可能性がある菌(Bacteroides fragilis group)の割合が、プラセボ飲用期と比べて、はちみつ乳酸菌中用量と高用量の飲用期に減りました。

はちみつ乳酸菌の腸内細菌改善作用

Beneficial Microbes. 2016;7(3):337-344.)