山田養蜂場運営の研究拠点「山田養蜂場 健康科学研究所」が発信する、情報サイトです。ミツバチの恵み、自然の恵みについて、予防医学と環境共生の視点から研究を進めています。
近年、ローヤルゼリーの機能を明らかにする研究が進められており、人の健康にどのように役立つかが解明されつつあります。ここでは、信頼性のある科学的な手法で行われた最近の研究成果を、ダイジェスト版でお伝えします。
施設に入居している高齢者に、酵素分解ローヤルゼリー(低用量、高用量)、または、ローヤルゼリーを含まないプラセボ(偽薬)を飲んでもらった結果、プラセボを飲用したグループでは筋力が低下しましたが、酵素分解ローヤルゼリーを12か月間飲用したグループでは飲用量に応じて筋力の低下が抑制され、高用量で飲用したグループでは、プラセボを飲用したグループよりも顕著に抑制されました。
(Sci Rep. 2017;7(1):11416. )
近年の研究で、血圧改善が期待できるペプチドがあることがわかりました。ローヤルゼリーにもペプチドが豊富に含まれているため、ローヤルゼリーの飲用が血圧に作用するかどうかを調べる試験が行われました。
予備検査で血圧が高めの人(最高血圧130~159 mmHg 、最低血圧85~99 mmHg )を、2つのグループに分けて試験を行いました。
一方のグループには、ローヤルゼリーペプチドを含む錠剤4錠(ローヤルゼリーペプチド250㎎/錠)を1日1回、もう一方のグループにはプラセボ4錠を1日1回、12週間飲用してもらいました。
その結果、正常高値血圧者(最高血圧130~139 mmHg、最低血圧85~89 mmHg)で、ローヤルゼリーペプチドを含む錠剤を飲用したグループでは、プラセボを飲用したグループと比較して、最高血圧と最低血圧の両方が飲用開始10週間後と12週間後に低下しました(図)。軽症高血圧者でも、ローヤルゼリーペプチドの飲用によって血圧の低下が見られました。
昔から、白米などの糖質をたくさん摂っている日本人。さらに、食事の欧米化や生活習慣の乱れによる肥満が増えた影響で、厚生労働省によれば、現在、糖尿病患者はその予備軍も含めて2,210万人に上ると推定されています。
日本人の糖尿病の90%以上をしめる「2型糖尿病」の初期症状として、「インスリン抵抗性」があります。これは、肥満や運動不足、栄養バランスの悪い食事や生活習慣の乱れによって、血糖を代謝させるホルモンである「インスリン」の効きが悪くなるというもの。
食後の血糖値が正常な値に戻りにくくなり、ついには、空腹時でも血糖値が高い状態になってしまいます。インスリン抵抗性は、高血糖状態が持続する糖尿病の一歩手前の症状であり、他のメタボリックシンドロームの兆候でもあります。
酵素分解ローヤルゼリーには、インスリン抵抗性を予防し、糖尿病の進行を抑制する働きがあることが、確認されました。
果糖飲料水を与えたインスリン抵抗性モデルに、酵素分解ローヤルゼリーを与える群と与えない群のそれぞれの、インスリン抵抗性指数を算出しました。 インスリン抵抗性指数は、インスリン抵抗性の進行度を示す値です。その結果、両群とも等量の果糖をとっているにもかかわらず、酵素分解ローヤルゼリーを与えた群では、インスリン抵抗性指数が正常値に保たれていました。
(Biol Pharm Bull. 2008 Nov;31(11):2103-7. )
血中の中性脂肪の増加は、糖質の摂取量の多さを反映しており、脂質異常症の症状のひとつでもあります。インスリン抵抗性モデルは、血中の中性脂肪が増加しますが、ローヤルゼリーを与えると、正常値の範囲内に抑えられました。
酵素分解ローヤルゼリーによる血中の中性脂肪低下作用
(Biol Pharm Bull. 2008 Nov;31(11):2103-7. )
インスリン抵抗性が進行すると、動脈の血管が過度に収縮する等、“血管反応性”に異常をきたし、糖尿病における血管合併症の遠因となります。この血管反応性についても、ローヤルゼリーを与えることにより、正常に保たれることがわかりました。
(Biol Pharm Bull. 2008 Nov;31(11):2103-7. )
当研究所では、女性の骨の健康を保つ、ローヤルゼリーの効果を検証。更年期モデルでは骨密度が減少しましたが、ローヤルゼリーを与えた更年期モデルでは、骨密度の減少が抑えられ、投与量に比例して骨中のカルシウム量が増加することが明らかとなりました。さらに酵素分解ローヤルゼリーを投与すると、カルシウムの増加量が一層多くなる傾向があることが判明しました。骨粗しょう症の予防に、酵素分解ローヤルゼリーが役立つ可能性が示されたのです。
ローヤルゼリーの摂取と骨密度
(Evid Based Complement Alternat Med. 2006 Sep;3(3):339-48. )
つらい肩こりに悩む更年期世代の女性20名を2群にわけ、一方のグループには酵素分解ローヤルゼリーを含む錠剤、もう一方のグループには酵素分解ローヤルゼリーを含まないプラセボ錠を4週間飲んでもらいました。そして、摂取開始1 週間前から摂取終了までの5 週間を通じて、肩こりに関するさまざまな自覚症状の重症度を、5 段階(1:まったく感じない、2:ほとんど感じない、3:少し感じる、4:感じる、5:非常に感じる)のスコアとして毎日記録してもらいました。その結果、酵素分解ローヤルゼリーを飲んだグループでは、プラセボを飲んだグループと比べて、「首筋のはり」に対する自覚症状スコアが大きく改善することが示されました。つらい肩こりの軽減に、酵素分解ローヤルゼリーが役立つことがわかりました。
※飲用量:ローヤルゼリー生換算 3,600 mg/日
(Eastern Medicine 26, 1, 55-64 (2010) )
更年期の日本人女性を対象に行ったヒト試験の結果、ローヤルゼリーを12週間飲用したグループは、飲用しなかった(プラセボ)グループと比較して、更年期に起こりやすい不安感および腰・背中の痛みが改善されることが確認されました。
(Evid Based Complement Alternat Med. 2018 Apr 29;2018:4868412. )
冷え症の女性24名(平均年齢25.5歳)を3グループに分け、それぞれをプラセボ群、ローヤルゼリー低用量群(1.4 g/日:生換算量4,200 mg/日相当)、ローヤルゼリー高用量群(2.8 g/日:同8,400 mg/日相当)として、試験食を2週間飲んでもらいました。そして、摂取前後にアンケートを行うとともに、緩和な寒冷ストレス負荷試験を行いました。これは、20 ℃の水に両手を1分間浸した後、水分を速やかにふき取り、手指の表面温度をサーモグラフィーで1分ごとに測定するものです。
その結果、ローヤルゼリーの摂取量が多いグループほど、冷たい水にさらした後の手の表面温度の回復が早くなりました(図は典型例を示しています)。
また、アンケートによる主観的な評価の結果、ローヤルゼリーを摂取したグループでは、摂取量にかかわらず、「手足や腰が摂取前より温かくなった」という実感が得られていることがわかりました。
このように、ローヤルゼリーには冷え症を改善する効果があることがわかりました。この結果は、更年期女性にも当てはまると推測されており、引き続き研究が進められています。
(日本栄養食料学会誌 第63巻 第6号 271-278 (2010))
乾燥肌に悩む男女を対象に行ったヒト試験の結果、酵素分解ローヤルゼリーを1日あたり2,000 mg(生換算)の用量で12週間飲用したグループでは、飲用しなかった(プラセボ)グループと比較して、頬の角層水分量が有意に高くなりました。
図1 角層水分量の変化また、酵素分解ローヤルゼリーを飲用したグループでは目立つ毛穴が小さくなり(図2)、色素沈着の増加が抑えられました(図3)。
図2 目立つ毛穴の変化(Jpn Pharmacol Ther. 2020;48(1):79-88.)
頬の角層水分量が多い人を除いた女性を3グループに分け、それぞれローヤルゼリー7,200 mg/日(高用量群)、3,600 mg/日(低用量群)、プラセボ錠(プラセボ群)を12週間飲用してもらいました。その結果、低用量群および高用量群ともに、目尻のシワの深さが、プラセボ群と比較して有意に改善しました。
(ファインケミカル, 42(8), 20-25, 2013)
乾燥を自覚している40~57歳の男女35名に対して、顔の左右どちらか半分にローヤルゼリーエキス含有溶液を、もう半分にローヤルゼリーエキスを含まない溶液(プラセボ)を1日2回、4週間塗布してもらいました。その結果、ローヤルゼリーエキスを4週間塗布した側の頬では、塗布前およびプラセボを塗布した側の頬と比べて、角層水分量の指標となる静電容量が高くなりました。
(J Cosmet Dermatol. 2022 Jul 1.)
頭頸部がん患者を対象に行ったヒト試験の結果、化学放射線治療を実施すると同時にローヤルゼリーを飲用した群では、飲用しなかったコントロール群と比較して、口内炎グレードが有意に低くなりました。化学放射線治療の副作用として発生する口内炎の悪化を、ローヤルゼリーによって抑制できる可能性が示されました。
口内炎グレード
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(Int J Otolaryngol. 2014;2014:974967.)
耳鳴りの自覚症状がある成人24名を2つのグループに分け、医師の指導のもとローヤルゼリーをそれぞれ高用量(2800 mg/日)と低用量(700 mg/日)で8週間摂取してもらいました。耳鳴りに対する影響は、アンケートによる主観的評価と、専用の機器を用いた客観的評価によって総合的に判定しました。その結果、どちらのグループでも耳鳴りの改善結果が得られ、特に高用量のグループでは、より改善の割合が高いことが明らかになりました。
(応用薬理. 75(5/6), 109-116, 2008)
更年期の日本人女性を対象に行ったヒト試験の結果、ローヤルゼリーを12週間飲用したグループは、飲用しなかった(プラセボ)グループと比較して、更年期に起こりやすい不安感が改善されることが確認されました。
(Evid Based Complement Alternat Med. 2018 Apr 29;2018:4868412.)
ローヤルゼリーには免疫力を高める効果が期待されています。そこで、ローヤルゼリーが免疫力を高めるメカニズムを、腸管免疫(※1)に着目して調べました。
※1 腸管免疫…腸に備わっている、病原体を排除するための仕組み。
まず、腸管上皮細胞にローヤルゼリーを添加し培養したところ、腸管上皮細胞がM細胞(※2)と同様の性質を持った細胞に変化し、機能も高まることが示唆されました。
※2 M細胞…病原体を取り込むための入口。取り込まれた病原体に対して、免疫細胞はIgA(免疫グロブリンA)などの抗体をつくり出す。
次に、酵素分解ローヤルゼリーを摂取すると抗原(※3)に特異的なIgA抗体の反応性が上昇するかを調べました。その結果、抗原と酵素分解ローヤルゼリーを同時に摂取したグループでは、抗原特異的IgA抗体の反応性が著しく向上しました。
※3 抗原…抗体を作らせる物質。病原体など。
以上の結果は、ローヤルゼリーの摂取によって腸管免疫が強化され、細菌やウイルスへの抵抗力が高まる可能性を示唆しています。
詳しい研究内容はこちら
(Food Sci Nutr. 2013 Mar 6;1(3):222-7.)
ローヤルゼリーに多く含まれる10-ヒドロキシデカン酸(デカン酸)を、ヒト上皮様培養細胞に添加したところ、M様細胞への分化が誘導されました。さらに、デカン酸を摂取すると、腸管パイエル板のM細胞の増加を介して、抗原に特異的なIgA抗体の産生が促進されることが明らかになりました。デカン酸が上皮細胞に作用してM細胞を増やし、免疫応答に働くIgA抗体の産生を促すことで、腸管免疫に寄与していると考えられます。
詳しい研究内容はこちら
(Biol Pharm Bull. 2020;43(8):1202-9.)