山田養蜂場運営の研究拠点「山田養蜂場 健康科学研究所」が発信する、情報サイトです。ミツバチの恵み、自然の恵みについて、予防医学と環境共生の視点から研究を進めています。
近年、プロポリスの機能を明らかにする研究が進められており、ヒトの健康にどのように役立つかが解明されつつあります。ここでは、信頼性のある科学的な手法で行われた最近の研究成果を、ダイジェスト版でお伝えします。
体内で起こっている「酸化」とは、とりこんだ酸素の一部が活性酸素となって、細胞などを傷つけること。こうした“酸化ストレス”が、老化をひき起こす「体のサビ」であり、心臓病や脳血管障害、がんなどさまざまな病気を引き起こす要因になるといわれています。
人間は、これらの酸化を消去するための抗酸化機能をもっていますが、その機能は加齢とともに衰えます。
活性酸素は喫煙、大量の紫外線照射、飲酒、肉体的・精神的ストレスなどの要因でも発生します。その要因のひとつである過酷なスポーツの前後に、プロポリスの抗酸化機能を確認しました。
激しい運動により強い酸化ストレスを受ける大学剣道部の合宿中の試験において、プラセボを摂取したグループ(プラセボ群)よりもブラジル産プロポリスを摂取したグループ(ブラジル産プロポリス群)の方が血中の還元型アルブミンの割合が高かったことから、酸化ストレスが軽減することが確認されました。
(Advances in Exercise and Sports Physiology.Vol.11,No.3 pp.109-113(2005).)
基礎研究用の培養神経細胞(PC12m3細胞)の培養液に、プロポリスエキス(ブラジル産プロポリスのエタノール抽出物)と、プロポリスの主成分である桂皮酸誘導体の「アルテピリンC」を添加して7日間培養し、培養神経細胞から伸びた神経線維(神経突起)の本数と長さを測定したところ、プロポリスとアルテピリンCには、ともに顕著な神経突起の形成作用がみられました。これは、プロポリスによって神経細胞が神経突起でつながり、新たな情報の伝達回路を作ることで、傷ついた神経が修復されて機能が回復する可能性に繋がる結果と考えられます。さらに研究が発展すれば、認知症などの神経疾患に役立つ可能性があります。
(Neurochem Res. 2008 Sep;33(9):1795-803. )
高齢者を対象としたヒト試験の結果、プロポリスを飲用しなかった(プラセボ)グループでは認知機能スコアが低下しましたが、ブラジル産プロポリスを24か月間飲用したグループでは、認知機能スコアが緩やかに改善することがわかりました。
(J Alzheimers Dis. 2018;63(2):551-560. )
もの忘れを自覚する日本人男女を対象としたヒト試験の結果、プロポリスを24週間飲用したグループでは、プロポリスを飲用しなかった(プラセボ)グループよりも、言語記憶力の改善の程度が大きくなりました。
(Evid Based Complement Alternat Med. 2021 Feb 24;2021:6664217. )
もの忘れを自覚する日本人男女を対象としたヒト試験の結果、プロポリス、イチョウ葉、フォスファチジルセリン、クルクミンを含むサプリメントを12週間飲用したグループでは、飲用しなかった(プラセボ)グループと比較して、言語記憶力や注意力に関わるスコアの変化量が向上しました。
また、プロポリス、イチョウ葉、フォスファチジルセリン、クルクミンを含むサプリメントを飲用したグループでは、注意力・集中力・判断力に関わるスコアの変化量が改善されました。
さらに、プロポリス、イチョウ葉、フォスファチジルセリン、クルクミンを含むサプリメントを飲用したグループでは、言語記憶力(数秒~数十秒程度、覚えておく力。例えば、電話番号を調べて電話をかけるまでの間、番号を記憶しておく等)に関わるスコアの変化量が向上しました。
(Jpn Pharmacol Ther, 2020;48(10):1805-19. )
高脂肪食にブラジル産プロポリスを0.5%含む食事を与えた高用量群では図に示した組織の脂肪量、血清や肝臓に含まれる脂質の減少が見られました。
また、高用量のプロポリス摂取により、コレステロールを作るタンパク質の「HMG-CoA還元酵素」の量が減少することや、同時に行われた別の試験で、事前にプロポリスを投与すると中性脂肪の吸収量が減少することが確認されています。これらのことから、プロポリスは、コレステロールの体内合成を抑え、脂肪の吸収を阻害するメカニズムにより、体内の脂肪を減少させているのではないかと考えられます。
(J Food Sci. 2009 Jun;74(5):H127-31. )
プロポリスに由来する成分であるアルテピリンCを4週間飲用することで、白色脂肪細胞が褐色脂肪細胞化している様子が観察されました。
白色脂肪細胞は脂質をエネルギーとして蓄積するのに対し、褐色脂肪細胞はエネルギーの消費を促進します。したがって、アルテピリンCは代謝効率を高めることで、プロポリスのアンチエイジング効果に寄与していると考えられます。
詳しい研究内容はこちら
(PLoS One. 2016 Sep 6;11(9):e0162512. )
糖の多い食生活によって悪化するインスリン抵抗性(糖尿病の初期症状であり、インスリンが効きにくくなる状態)を予防できるか試験しました。
フルクトース飲料水に加え、プロポリスを8週間与えると、インスリン抵抗性指数の上昇が正常なモデルと同程度に抑えられました。
つまり、プロポリスを健康な状態のときから継続的に飲用する“予防的な飲用”によって、インスリン抵抗性を抑える可能性が明らかとなったのです。
(注)対照:正常、果糖:フルクトース飲料水負荷モデル(インスリン抵抗性モデル)、プロポリス:プロポリスエキス飲用.
(Yakugaku Zasshi. 2007 Dec;127(12):2065-73.)
免疫反応により皮膚や粘膜に放出される「ヒスタミン」は、かゆみや炎症を生じさせる物質です。ヒスタミンを放出させる試薬を用いて、かゆみを生じさせ、背中をひっかく回数からかゆみの強さを測定したところ、プロポリスを投与した群でかゆみが軽減しました。プロポリス(1000 mg/kg 体重/日)を事前に1回食べさせた場合と、より少量のプロポリス(500 mg/kg 体重/日)を4週間続けて食べさせた場合のいずれもかゆみは軽減されました。また、プロポリス(1000 mg/kg 体重/日)を4週間続けて食べさせた場合、かゆみがさらに軽減し、プロポリスの濃度に比例してヒスタミン放出が抑制されることもわかりました。アレルギーにつきものの「かゆみ」が、予防的なプロポリスの飲用により軽減されることが確認されました。
(International Immunopharmacology 4, 1431-1436(2004))
軽度のスギ花粉症患者80名を20名ずつの4グループにわけ、ブラジル産プロポリスを含む錠剤とプロポリスを含まないプラセボ錠(偽薬)を、それぞれスギ花粉飛散前から、プロポリスの摂取量を3段階設定して12週間摂取してもらいました。その結果、ブラジル産プロポリス(300 mg/日以上)をとった群では、花粉症の発症を遅らせることができました。
(応用薬理76(34) 71-77(2009) )
また、最もプロポリスを多く摂った群(450 mg/日)では、摂取8週間後以降で鼻づまりの発症率が低下しました 。つまり、スギ花粉が飛散する前からプロポリスを予防的に摂取することにより、花粉症の症状が軽減されたのです。
(応用薬理76(34) 71-77(2009) )
次に、プロポリスが花粉症にどのように効果を発揮しているのか、メカニズムを調べました。
スギ花粉症患者から得られた白血球(もしくは末梢血単核球細胞)にスギ花粉症の原因であるアレルゲンタンパク質とブラジル産プロポリスのエタノール抽出物を加え、免疫反応で放出される炎症関連物質の量を測定。ブラジル産プロポリスが炎症関連物質cys-ロイコトリエンの放出を抑えるというメカニズムが明らかになりました。
(Bioorg Med Chem. 2010 Jan 1;18(1):151-7. )
この研究結果から、プロポリスがアレルギーの発症を抑えるメカニズムは、以下の図のように考えられています。
炎症関連物質・cys-ロイトコリエンは、鼻づまりを起こす物質ですが、気管支喘息の原因であるともされているので、今後の研究が期待されます。
成人男女59名 (20~69歳) を、2グループに分け、一方にはブラジル産プロポリスエキス (450 mg) を含むソフトカプセル、もう一方にはプラセボ(偽薬)として、プロポリスエキスを含まないソフトカプセルを60日間継続して投与。その間の風邪症状の有無とその症状レベルをアンケート式の日記に記してもらいました。その結果、風邪が治るまでの日数は、プロポリス群ではプラセボ群より平均1.3日早く、体のだるさの重さを表すスコア(試験期間中の合計)も大幅に低くなり、ブラジル産プロポリスの継続的な飲用は、体のだるさを軽減し、風邪の治りを早めることがわかりました。
(Pharmacometrics, 79 (3/4), 43-48, 2010)
頻尿に悩んでいる女性に、ブラジル産グリーン系プロポリスエキス、ペポカボチャ種子エキスおよびクランベリーエキスを配合したサプリメントを8週間飲用してもらった結果、飲用前と比べて飲用4週間後には夜間排尿の回数が約半分に減少することが確認されました。
また、飲用前と比べて、飲用4週間後および8週間後に「睡眠の質」が有意に改善することが確認されました。
さらに、飲用前と比べて、飲用4週間後および8週間後に、夜間頻尿により妨げられる生活の質のスコアが改善することが確認されました。
(Jpn Pharmacol Ther, 2021;49(8):1295-305. )