山田養蜂場運営の研究拠点「みつばち健康科学研究所」が発信する、情報サイトです。ミツバチの恵み、自然の恵みについて、予防医学と環境共生の視点から研究を進めています。
“毒”というだけで、よくない印象を与えてしまう「蜂毒」。刺されて痛い、ハチは怖いというイメージはここから来ているのかもしれません。みっちの心配に、ハチロー博士は、蜂毒の健康への意外なちからについて教えます。
みっち: | ねえ、博士。わたしは博士から、ミツバチたちの素敵なところをたくさん教えてもらっているけど、わたしのお友だちには、「蜂はこわい」っていう子もいるの。「針で刺されるからこわい」って。 |
---|---|
ハチロー博士: | たしかに、ミツバチには針があり、攻撃するときはその根元の毒嚢(どくのう)という小さなタンクにためられた「蜂毒」と呼ばれる毒液を体内に送りこむ。だが、ミツバチはめったに刺さないし、その武器を使うとしても、一生に一度だけなんだ。 |
みっち: | あー、一度敵を刺したら、そのミツバチは死んでしまうって聞いたことがあるわ。 |
ハチロー博士: | そうだ。ミツバチの針は相手の体から抜けにくいような形になっていて、一旦刺すと蜂の腹部の腸ごと取れてしまう。針を失ったミツバチは、生きていられないんだよ。 |
みっち: | ミツバチたちにとっては命がけなのね。でも、刺されたら腫れて痛そう…。 |
ハチロー博士: | 蜂毒のなかには、痛みやかゆみを起こす成分がふくまれているからね。 |
アミン類 | ノルアドレナリン、ドーパミン、ヒスタミン、セロトニン、アセチルコリン |
---|---|
ペプチド類 | アパミン、MCD-ペプチド、アドラピン、メリチン |
酵素類 | フォスフォリパーゼA2、ヒアルロニダーゼ |
糖類 | グルコース、フルクトース |
ポリアミン類 | プトレッシン、スペルミジン、スペルミン |
その他 | リン脂質、アミノ酸 |
作用 | 原因物質名 |
---|---|
痛み・かゆみ | アミン(ヒスタミン、セロトニン、ノルアドレナリン)、アセチルコリン |
血管拡張 | アミン(ヒスタミン、セロトニン) |
ヒスタミン遊離作用 | ペプチド(MCD-ペプチド) |
白血球遊離作用 | ペプチド(メリチン) |
溶血作用 | 酵素(フォスフォリパーゼA2) |
局所破壊 | 酵素(フォスフォリパーゼA2、ヒアルロニダーゼ) |
神経毒 | ペプチド(アパミン) |
出典:藤田陽子・鍛冶誠一郎「蜂針療法」;ミツバチ科学20(1):17-26,1999