山田養蜂場運営の研究拠点「山田養蜂場 健康科学研究所」が発信する、情報サイトです。ミツバチの恵み、自然の恵みについて、予防医学と環境共生の視点から研究を進めています。
ミツバチからの贈り物、ローヤルゼリーやプロポリスについて、知らないことはまだまだあります。
ミツバチがどうやって作るのか、人々は歴史の中でどうかかわってきたのか……詳しく知るほど自然の恵みに感謝したい気持ちになります。
ローヤルゼリーには数々の神秘があります。中でもいちばんの不思議は、ミツバチを女王蜂として育てる力を持っていること。ローヤルゼリーがなければ女王蜂になることはできません。
「ローヤルゼリーって、高級なはちみつなの?」と思われている人もいることでしょう。
でも、ローヤルゼリーとはちみつは全く別なもの。どのように違うのか詳しく見ていきましょう。
はちみつは、ミツバチが集めた蜜を巣の中で濃縮・熟成して作られます。
はちみつは働き蜂の食べ物です。一方のローヤルゼリーは、ミツバチが花粉を食べ、体内で分解・合成し、分泌して作られます。
見た目はとろりとした乳白色で、食べるとピリッとした酸味があります。
ローヤルゼリーは女王蜂の食べ物ですが、それだけではない、不思議な力を秘めています。
働き蜂も女王蜂も、同じミツバチのメス。実は卵の段階では、遺伝子レベルでみても、働き蜂と女王蜂の違いはありません。
卵が孵化(ふか)して幼虫となり、"ローヤルゼリーを食べ続けたミツバチだけが女王蜂になる" という不思議な力が働きます。
卵からかえった幼虫は、働き蜂として育てるか、女王蜂として育てるかによって、与える食事が区別されます。
働き蜂となる幼虫が最初に与えられるのは、ローヤルゼリーに似ているものの、栄養価はローヤルゼリーより低い「ワーカーゼリー」という食べ物です。
女王蜂となる幼虫は、はじめからローヤルゼリーを食べて成長し、生涯にわたってローヤルゼリーを食べ続けます。
そして上に示したように、働き蜂とは大きく異なる性質を持つことになります。
女王蜂は働き蜂と比べて身体が大きく、寿命も長く、毎日1500~2000個もの卵を産むことができます。
女王蜂には驚くほど強い生命力が備わっているのです。
古代ギリシャの哲学者・アリストテレスは著書『動物誌』の中に、次ような記述を残しています。
「濃厚なはちみつに似た淡黄色の柔らかいもの、その中から女王蜂の幼虫は誕生する」
はちみつに似た淡黄色の柔らかいものとは、ローヤルゼリーのこと。
ローヤルゼリーが女王蜂を誕生させる鍵であることは、紀元前から知られていました。
日本でローヤルゼリーの知名度を高めたのは、明治・大正期の農学研究の第一人者であった玉利喜造・農学博士です。
玉利博士は、ローヤルゼリーを「王家の舐物」という名で紹介し、不老長寿の薬ではないかと人々の注目を集めました。
1950年代、ローヤルゼリーを世界に広める出来事がありました。
ピオ12世として知られるローマ法王が、肺炎から危篤状態に陥った際、主治医がローヤルゼリーを与えたところ、病状は徐々に改善され、元の元気な状態まで回復したのです。
このことはドイツの国際学会で発表され、後にローマ法王自らが国際養蜂会議の場において、ミツバチをたたえる演説を行いました。
このように古代から現代に至るまで、ローヤルゼリーが持つ力は人々の健康に役立てられています。
このように古代から現代に至るまで、ローヤルゼリーが持つ力は人々の健康に役立てられています。
近年になり、ローヤルゼリーの健康と美への有用性は科学的に検証されるようになりました。 数多くの研究の中から代表的なものを紹介します。 昔から身体によいといわれていたローヤルゼリーが、さまざまな悩みに働きかけることがわかってきています。 女王蜂だけでなく人にとっても、元気でいるための特別食なのかもしれません。
●骨の形成に必要な骨芽細胞にローヤルゼリーを添加して培養した結果、骨芽細胞が増殖した。
また、骨の強度のために必要なコラーゲン量が増加した。このことから、ローヤルゼリーが骨粗しょう症予防に役立つことが示唆された(※9)。
〈出典〉
※1 健康・栄養食品研究, 8, 37, 2005
※2 Health Sciences, 22(2), 204 , 2006
※3 Journal of Nutritional Science and Vitaminology, 53, 2007
※4 J. Altern. Complement. Med., 15(4), 2009
※5 Eastern medicine, 26(1), 2010
※6 日本栄養・食糧学会誌63(6), 2010
※7 ファインケミカル42(8), 2013
※8 日本美容皮膚研究会雑誌6(1), 2013
※9 Biosci. Biotechnol. Biochem., 70(10), 2006
プロポリスはミツバチにとって、どんな役割を持っているのでしょうか? なぜ人の健康に役立てることができるのでしょう。
プロポリスが持つ力の秘密に迫ってみましょう。
プロポリスの語源は、ラテン語の「プロ(前、正面)」とギリシャ語の「ポリス(都市)」。
「都市への敵の侵入を防ぐ城壁」という意味を表しています。
プロポリスは、植物の新芽やつぼみ、樹皮から集めた樹脂に、花粉、ミツバチの唾液、ミツロウなどを混ぜ合わせて、ミツバチによって作り出されます。
樹脂や新芽には、植物が自らを保護するための優れた抗菌作用や修復作用があるので、ミツバチはこれを巣作りに利用しているのです。
ミツバチは、プロポリスを巣の入り口やすき間に塗り、細菌やウイルスから巣を守っています。
巣の中は温かく湿度も高いため、そのままではミツバチが外から持ち込んだ菌が増殖してしまいます。
プロポリスの力を借りなければ、巣内の衛生を保つことは難しいでしょう。
ミツバチにとってプロポリスは、まさに敵の侵入を防ぐ城壁。
その力は、人にもさまざまな恵みをもたらしてくれます。
プロポリスに優れた抗菌作用があることは、科学的に確認されています。ミツバチの巣箱を用いた次のような試験が行われました。
試験
① ミツバチの巣箱を用意し、巣箱Aにはブラジル産プロポリスを含んだエタノール、巣箱Bにはプロポリスを含まないエタノールを塗る。
② ミツバチを巣箱で生活させたあと、ミツバチに有害な菌と、不衛生な環境にいるときにミツバチが作る抗菌ペプチドの量を比較。
結果
プロポリスを塗った巣箱Aは、巣箱Bより有害菌が少なく、抗菌ペプチドもほとんど作られませんでした。
巣箱Bでは抗菌ペプチドが大量に作られていました。この試験により、ミツバチにとってプロポリスは優れた抗菌作用があると確かめられました。
人々がプロポリスとかかわってきた歴史は古く、古代ギリシャや古代エジプトなどで、健康のために用いられていた記録があります。
アリストテレスは『動物誌』の中で、プロポリスが皮膚疾患、切り傷、感染症の治療薬として使われていたと記しています。
日本で初めてプロポリスが大きく注目されたのは、1985年に名古屋で開催された国際養蜂会議でした。
これをきっかけとして、現在ではプロポリスの特有成分「アルテピリンC」に注目するなど、科学的研究が積極的に行われています。