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「健やかに」発刊録

「健やかに」2016年4月号 肥満を解消して病気にならない身体に! | 「健やかに」発刊録 | 山田養蜂場 健康科学研究所

「少しくらい太っていてもいい」と思いますか? でも、若いころと違い、中年以降、身体につくのは、病気につながる「内臓脂肪」。
健康にとっては危険な脂肪です。内臓脂肪をため込む原因とる、炭水化物の摂りすぎや、生活リズムの乱れを上手に修正する方法をご紹介します。

原因編 病気の引き金になるのは内臓脂肪型の肥満

「太っていない」と思っている人も、おなか周りは……?

年齢とともに、気にしなければならないのは、「体重」よりも「おなか周りのサイズ」です。 男性は20代より30代、30代より40代と、着々とおなかの脂肪が増えていく傾向があり、女性は更年期を迎えると急におなかの脂肪がつきやすくなります。 

40歳を過ぎたら体重よりも、おなか周りに注意!

この「おなか周りの脂肪」は皮下脂肪ではなく、ほとんどが内臓脂肪です。 
女性は、女性ホルモンに守られているため、男性より内臓脂肪がつきにくいのですが、更年期になり、女性ホルモンの分泌が低下していくと、男性と同じように内臓脂肪がつきやすくなります。若い女性でふくよかな人は「皮下脂肪型肥満」ですが、更年期から脂肪がつき始めた人は、「内臓脂肪型肥満」になっている可能性があります。 
高齢になると、若いころより筋肉が落ち、筋肉は脂肪よりも重いので、内臓脂肪型肥満になっても、体重はあまり増加しないことがあります。また、やせて見えるタイプで、おなかさえ隠してしまえば、肥満しているようにはまったく見えない人もいます。そこに落とし穴があります! 
なぜなら、下図に示したような、動脈硬化や2型糖尿病などの生活習慣病の引き金になるのは、"つきすぎた内臓脂肪"だからです。

放置した内臓脂肪型肥満がたどる道は---

肥満が危険な理由の一つは、ホルモンの分泌を乱すこと

肥大化した脂肪細胞と内臓脂肪が危険!

そもそも、「肥満」とは何でしょうか。体内で余ったエネルギーは「中性脂肪」に変えられ、「脂肪細胞」にたくわえられます。
中性脂肪が増えすぎると、脂肪細胞は分裂して新たな脂肪細胞がつくられます。この状態が進んだものが肥満です。
ところが、脂肪細胞の分裂には限りがあり、分裂できなくなると、今度は一つひとつの脂肪細胞が肥大化します。ここで困った問題が起こります。 近年、脂肪細胞からはさまざまなホルモンが分泌されていることがわかりました。
しかし、肥大化した脂肪細胞からは、インスリンの働きを悪くするホルモン、血圧を上げるホルモンなどが多く分泌され、反対に、インスリンの働きをよくするホルモンなどは分泌されにくくなります。
ホルモンにはそれぞれの役割がありますが、大きくみると、悪玉ホルモンが増え、善玉ホルモンが減ってしまうことになります。

脂肪細胞の肥大化や、内臓脂肪によって増えるホルモン・減るホルモン

これと同じことが、内臓脂肪がつきすぎた場合にも起こります。悪玉ホルモンが増加し、善玉ホルモンが減少することにより、インスリンの働きなどが悪くなって、生活習慣病を進行させてしまうのです。

内臓脂肪をため込みやすい生活をしていませんか?

チェックリスト

内臓脂肪は皮下脂肪より落としやすい!

生活習慣は、年齢に合わせて変えていく必要があります。
たとえば、「若いころは、いくら食べても太らなかった」という人も、内臓脂肪をため込まないようにするためには、食生活をはじめ、生活のさまざまな習慣を見直すことが大切です。
上のチェックリスト(1)~(5)にチェックが多くついた人は、とくに解決編その1を、(6)~(8)にチェックが多くついた人は、解決編その2を参考にしてください。
(9)にチェックをつけた人は禁煙を、(10)にチェックをつけた人は、今日から軽い運動を始めましょう。うれしいことに、内臓脂肪は皮下脂肪よりも落ちやすい性質なので、生活習慣に気をつけるだけでも、効果が早く表れる可能性があります。

コレステロール豆知識

ローヤルゼリーを4週間飲用して悪玉コレステロールが減少

試験方法

健康な成人男女15人を無作為に2つのグループに分け、一方はローヤルゼリーを4週間毎日飲んでもらう「ローヤルゼリー群」、もう一方はローヤルゼリーを飲まない「対照群」としました。
両グループとも、試験前および4週間後に、総コレステロール、悪玉(LDL)コレステロールなどの項目を測定しました。

結果

「対照群」は、有意な変化はありませんでしたが、「ローヤルゼリー群」は、総コレステロールが6%減少し、悪玉コレステロールが9.1%減少しました(下グラフ参照)。
この結果から、ローヤルゼリーの継続的な飲用によって悪玉コレステロールが減少し、動脈硬化をはじめとする危険な病気を防げる可能性が示されました。

グラフ

「悪玉と善玉の比率」が問題

ローヤルゼリーを2週間飲用して総コレステロールが減少

試験方法

高コレステロール血症(総コレステロール値220㎎/dL以上)の患者と、総コレステロール値200㎎/dL以上の患者、計49人を被験者として、1日10gのローヤルゼリーを2週間継続して飲用してもらいました。

結果

被験者49人について、飲用前と飲用開始2週間後のコレステロール値を比較したところ、高コレステロール血症の患者は、2週間後の総コレステロール値が著しく減少しました(下グラフ参照)。
また、善玉(HDL)コレステロールの割合が増加しました。
この結果から、ロルゼリーの継続的な飲用によって、動脈硬化をはじめとする危険な病気を防げる可能性が示されました。

コレステロール豆知識

解決編① 炭水化物を "少し" 減らしておなか周りの脂肪を解消!

炭水化物(糖質)を減らすと効果的な理由

糖質で太る仕組みには「インスリン」も関係

「おなか周りの脂肪=内臓脂肪」を落としたいとき、効果的なのは、炭水化物(糖質)を少しだけ減らす方法です。
炭水化物と糖質は少し異なり、大まかには、炭水化物から食物繊維をとり除いたものが糖質です。
血糖値は糖質を摂ることで上がりますが、糖質を摂りすぎると、血糖値を下げるホルモンであるインスリンと関係して、「肥満」と「インスリンの働きの低下」の悪循環が生まれます(上の図参照)。
このダイエットは、その悪循環を断ち切れる点で効果的です。また、炭水化物を控えるのは夕食だけにするなど、ルールをゆるめにしても効果が期待できることも長所です。
糖質を厳しく制限しすぎると、逆に動脈硬化のリスクを高めるという報告もあるので、極端にならないように注意しながら、以下の方法を実践してみてください。

実践!炭水化物をラクに減らす方法

主食をひと工夫

雑穀ごはんに少なく盛る

チェックリストで①にチェックをつけた人は、「ごはんを少なめに盛る」、「おかわりをしない」というルールを自分で決めて、守りましょう。
もう一つのおすすめは、白米100パーセントのごはんではなく、雑穀を入れた「雑穀ごはん」にすることです。
雑穀には食物繊維が豊富に含まれており、腸の働きを活発にするほか、噛みごたえがあって満腹感が得られやすくなります。
また、数種類の雑穀を混ぜることで、糖質の代謝を助けるビタミンや、ミネラル、ポリフェノールなどさまざまな栄養素をプラスすることができます。

いも類・くだものも食べすぎに注意

いも類・くだものも食べすぎに注意

炭水化物は主食のごはん類だけでなく、いも類やかぼちゃ、くだものにも多く含まれています。
とはいえ、これらに含まれる食物繊維やビタミンなどの大切な栄養素を摂らないのはもったいなくもあるので、食べすぎに気をつけなが上手に摂りましょう。

ビタミンB群を一緒に摂る

ビタミンB1、B2、B6などのビタミンB群は、炭水化物(糖質)・脂肪・タンパク質の代謝に不可欠な栄養素です。
とくに糖質の代謝を促す働きがあるのはビタミンB1で、玄米、胚芽米、全粒粉など胚芽の残った穀物や、きび、あわなどの雑穀、豚肉、ウナギなどに多く含まれています。

お酒は種類を選んで

お酒は種類を選んで

アルコール類は「醸造酒」と「蒸留酒」に分けられますが、糖質が少ないのは、焼酎やウイスキーなどの蒸留酒。
ビールや日本酒などの醸造酒は糖質が多めです。また、ワインは醸造酒ですが、辛口のワインは比較的糖質は少なめです。
こうした 糖質の少ないアルコールを適量飲むのであれば、内臓脂肪を減らす妨げにはなりません。

タンパク質、脂質の摂り方

炭水化物と並ぶ三大栄養素の「タンパク質」「脂質」の摂り方も大切です。
肉、魚、卵、大豆などさまざまな食品から摂ることで、タンパク質のアミノ酸バランスがよくなります。
脂質は、青魚に含まれるDHA、EPAなどや、亜麻仁油、えごま油など「オメガ3系」と呼ばれる脂肪酸を含む油が、悪玉コレステロールを増やさず、健康によい影響を与えます。

ギムネマの基礎知識

ギムネマ酸の飲用でインスリン値が低下、糖の吸収を抑える可能性?!

試験方法

平均年齢22歳の健康な男性を被験者として、3つのグループに分けました。
①ギムネマ酸50㎎を飲用。
②ギムネマ水抽出物2.0g(ギムネマ酸54㎎含有)を飲用。
③ギムネマ飲用しない(対照群)。
全グループについて、ギムネマ飲用の30分後にブドウ糖75㎎を飲用。飲用直前、飲用30分、60分、120分後に血清インスリン値を測定しました。

結果

ギムネマ酸またはギムネマ水抽出物を飲用したグループは、対照群と比べて、血清インスリン値が低くなりました。ギムネマ酸の飲用は血清インスリン値を低下させ、糖尿病や耐糖能()が低下している肥満の改善などに役立つ可能性が期待されています。
耐糖能  ブドウ糖を処理して血糖値を正常に保つ働き

グラフ

解決編その② 食べる時間帯を変えるだけで「おなかやせ」しやすくなる!

地球のリズムと生体リズム

地球のリズムと生体リズム

地球の環境に合わせて進化してきた人間の体内には、地球の自転に合った「体内時計」が組み込まれています。
1日の周期の中で、例えば、血圧は通常、朝の起床1~2時間後に最も高くなり、成長ホルモンは夜、就寝時に多く分泌されるというリズムがあり、これを「生体リズム」といいます。
健康であるためには、生体リズムを理解して、身体に負担をかけない生活をすることがとても大切! それと同時に、体内時計を毎日「リセット」する必要もあります。
なぜなら、地球の自転が1日24時間なのに対して、生体リズムの1日周期は約25時間であることがわかっているからです。

時計遺伝子ビーマルワン(BMAL1)とは

人間には「体内時計」が組み込まれているだけでなく、その時計を調節している「時計遺伝子」を持っていることが、近年になり確認されました。
また、時計遺伝子は脳にあるほか、身体のほとんどの細胞の中にも存在することがわかってきました。
時計遺伝子は現在、6種類発見されており、その中の一つ、「ビーマルワン(BMAL1)」は、肥満と深くかかわっています。
生体リズムとビーマルワンを利用した肥満解消法を見てみましょう。

ビーマルワンの変化を知って太らないコツを身につけよう

グラフ

ビーマルワンの仕事を減らし成長ホルモンを活発に

ビーマルワンの働きの一つに「炭水化物を脂質に変える」ことがあります。
また、ビーマルワンは日中に減り、夜増えるという1日のリズムを持っています。
これは、昼間使い果たしたエネルギーを夜間に再びたくわえる目的があるからです。
そのため、遅い時刻に炭水化物を摂ると、ビーマルワンはそれを効率よく脂肪細胞にため込み、結果として肥満を招きます。
これが遅い時刻に食事を避けたい理由です。
夜、活発に働いてほしいのは、細胞を修復し、脂肪を燃えやすくする成長ホルモンなど。睡眠中に成長ホルモンが働くためには、生体リズムが整っていることが重要になります。
朝は、日光と朝食で体内時計をリセットして1日を始め、夜は20時までに夕食を食べ終える。
この簡単なルールを守ることが、太らない身体を手に入れるコツといえます。

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