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「健やかに」発刊録

「健やかに」2015年10月号 アンチエイジング( 老化抑制)とローヤルゼリー研究

「健やかに」2015年10月号 アンチエイジング( 老化抑制)とローヤルゼリー研究

平均寿命では世界でトップクラスの日本ですが、一方で寝たきりの人の増加や介護の問題も深刻化しています。
そこで今回は、老化と寿命研究の第一人者・白澤卓二先生に、すぐに取り組めるアンチエイジングの方法や、考え方についてお話を伺いました。

自分の足で歩くために必要なことは?

年齢を重ねても若々しくありたい。自分の足で立ち、歩き、人の手を借りずに自立していたい、QOL(生活の質)を下げたくない。誰もがそう思っていても、現実には寝たきりになったり、介護が必要になったりする人がたくさんいます。

「要介護」状態を予防するためには、自分の足でしっかり歩けることが大前提です。ところが、2つの原因によって自力歩行が妨げられ、寝たきりになる方がいらっしゃいます。一つめの原因は骨密度が減少したり、骨の質(強度)が低下して、ちょっとしたことで骨折してしまう「骨粗しょう症」、そしてもう一つは加齢に伴って筋肉が減少する「サルコペニア」です。この2つは連動して起こることが多く、予防には共通点があります。

体を支え、動かしている骨と筋肉のためには、栄養をしっかり摂っているだけでは不十分。第一には、日常生活の中に運動を取り入れることが重要です。運動という基本条件に加え、栄養が十分摂れていてこそ、骨も筋肉も健やかに保たれ、年齢を重ねても自分の足で歩くことが可能になるのです。

10年先の健康のために今、生活を変えよう

骨に必要な3つの圧力

骨粗しょう症といえば、閉経後の女性に多くみられ、女性ホルモンが関係することが知られていますが、それだけではありません。骨密度を低下させないためには「重力」「筋力」「着地のときの衝撃」という、骨に対する3つの圧力がとても重要です。

宇宙飛行士が無重力状態の宇宙船の中で生活すると、トレーニングしなければわずか2週間でも骨がボロボロになるように、骨にとって重力がかかるということはとても大切です。また、高齢の方が入院などでベッドに横になっていると、立っているときのように足に重力がかからないので、筋力と骨密度の低下を招きます。病気自体は治っても、そのまま寝たきりになるケースも少なくありません。

筋力、すなわち骨の周囲の筋肉が十分あれば、骨を動かすときにしっかり圧力がかかります。ところが、サルコペニアによって年齢とともに筋肉が減少すれば、その分、かかる圧力も弱くなります。

3つめの「着地のときの衝撃」とは、歩いたり、階段や坂道を上ったりする際、足が地面に着くときの衝撃です。この衝撃が少なくなれば、骨への刺激が減少してしまい、骨粗しょう症を引き起こす原因になります。

ウォーキングやジャンピングで骨粗しょう症を予防

骨に刺激を与え、骨粗しょう症を予防したり、筋力の低下を防ぐためには、日常生活の中に運動習慣を取り入れることから始めてみましょう。特に激しい運動ではなくても、ウォーキングで十分です。それに加えて、その場で軽くジャンプをすれば、骨に圧力を与えることができます。

ウォーキングの途中に階段の上り下りを組み込むこともおすすめします。階段の昇降は平らな道を歩くときに比べ、骨に3倍の衝撃がかかるので、骨粗しょう症予防にも、筋力低下の予防にも効果的です。また、高齢者が転倒した際の原因として、「段差を乗り越えられなかった」というケースが多く見られます。段差のあるところをスムーズに越えられるかどうかで、電車やバスといった交通手段が利用できるかどうかが決まり、行動範囲に違いが出てきます。ですから、毎日の生活に階段の昇降を取り入れて、段差を気にせず歩ける状態を維持できるようにしましょう。

運動と同時に、食生活では、骨や筋肉にとって重要な栄養をきちんと摂りながら、栄養バランスのとれた食事をすることが大切です。

見た目の若さと直結する肌の健康を保つには?

肌がつややかで美しい人は、それだけでも若く健康に見え、年齢を感じさせません。逆に年齢を感じさせるシワやシミは、皮膚の線維芽細胞(せんいがさいぼう)が老化して、コラーゲンやエラスチン、ヒアルロン酸などをつくれなくなっていることが原因です。老化した細胞は元に戻すことができないので、老化が進行しないように、今、生活習慣を見直しましょう。

骨や筋肉や肌は、私たちの生活習慣と密接に関係しています。老化のスピードを遅らせ、いつまでも元気に若々しく生きるためには、今、生活習慣を改善することです。10年後、20年後の病気は今、予防するという意識を持つことが必要なのです。

生活習慣の一つひとつは、タバコをやめたり、ウォーキングをしたり、食事のメニューに気を配ったりというちょっとした習慣にすぎませんが、そうして生活パターンを変えていくことがアンチエイジングにつながり、年齢を重ねても健康でいるために必要な条件になります。今の自分が毎日何歩、歩いているか、歩数計を使って計ってみる。そのうえで、歩数を増やすために、ひと駅分歩くなど、生活パターンを変える努力をすること。その積み重ねが、将来の健康につながっていきます。

アンチエイジング(老化抑制)とローヤルゼリー研究 骨と筋肉の健康を保ちいつまでも自分の足で歩ける生活を!

栄養と日光浴で丈夫な骨づくり

骨の形成にはカルシウムとリンが必要ですが、日本人の場合、カルシウムが不足気味です。1日に必要なカルシウムの摂取量は700~800mg。牛乳100g あたりには約110mgのカルシウムが含まれ、リンもバランスよく含まれています。そのほか乳製品、豆腐、小魚などを積極的に摂りましょう。

また、カルシウムの吸収にはビタミンDが必要ですが、これは紫外線を浴びることによって体内でつくられます。特に冬や日照時間の少ない地域では、意識的に日光を浴びるようにしましょう。さらに、体内に吸収されたカルシウムを骨に吸着させるためには、ビタミンKが必要です。これは納豆などに含まれています。

最近の研究では、骨粗しょう症を防ぐには、骨密度だけではなく、骨質が重要だということがわかっています。骨質に大切な栄養素はコラーゲンで、フカヒレや、手羽先、豚足、牛スジなどに多く含まれています。

毎日たくさん歩き、筋力にはタンパク質を

自分で立ったり、歩いたりするためには、特に下半身の筋力が大切です。栄養状態でみると、血中のアルブミンの値が下がってくると栄養状態に問題があり、4.0を切ると、タンパク質の摂取量を増やす必要が出てきます。腎機能などそのほかの健康状態に問題がなければ、卵を1日に1個、1週間に7~10個摂れば、筋肉の増加に役立つでしょう。

筋力と丈夫な骨を維持するために、現在、健康な人であれば、1日8000歩を目安に歩きましょう。また、現在1日3000歩しか歩いていない人なら、まず1日4000歩を目標に歩きましょう。買い物はまとめてしないで、毎日、出かけて行くといった生活の工夫が大切です。

次に、大学の研究室や山田養蜂場 健康科学研究所で行われたローヤルゼリー研究を紹介します。はじめに紹介するのは、塩分摂取量と関係する「高血圧」の研究です。日本人の栄養摂取状況は、カルシウム不足とともに塩分の摂りすぎが問題になっています。

研究レポート1

研究レポート1 試験方法と結果

肌の若さは内側からのアンチエイジングが重要です

「細胞老化」がシワ、たるみの原因に

同窓会などで昔の同級生に会うと、誰かわからないぐらい変わってしまった人や、逆に若々しく、当時と変わりがない人などに分かれることに気づき、驚かされることがあります。

外見の差に大きく影響するのは肌。つややかで美しい肌の人は、それだけで美しく健康的です。

皮膚にある線維芽細胞(せんいがさいぼう)が老化すると、皮膚の「真皮(しんぴ)」という層を構成するコラーゲンやエラスチン、ヒアルロン酸といった成分がつくられなくなって肌に水分をたくわえる力も低下し、シワやたるみの原因になります。細胞の老化はテロメア(染色体の末端にあり、染色体を保護する。細胞分裂のたびに短くなる)が短くなって、機能しない細胞がそこに居座り、若い細胞の発生を阻害することによって起こります。短くなったテロメアは元に戻すことはできないので、日ごろからテロメアが短くならないような生活習慣を実践して、細胞老化を進めないことが大切です。

具体的な方法としては、

喫煙をやめる

肥満にならないように適正体重を保つ

運動不足を解消する

ストレスをためない

野菜やくだものなど、抗酸化食品を摂る

などがあげられます。

研究レポート2

研究レポート2 試験方法と結果

研究レポート3

研究レポート3 試験方法と結果

アンチエイジングは生活習慣の改善で

老化のスピードが早くなるか、ゆっくりに保つことができるかは、私たちの生活習慣と密接に関連しています。一つひとつは小さなことでも、改善すべき点があれば、気づいたときにすぐに改めていきましょう。そして、体によい生活習慣を続けることが、アンチエイジングの唯一の方法なのです。

白澤卓二(しらさわたくじ)先生

監修
白澤卓二(しらさわたくじ)先生
1958年神奈川県生まれ。順天堂大学大学院医学研究科・加齢制御医学講座教 授。千葉大学医学部卒業後、東京都老人総合研究所老化ゲノムバイオマーカー研究チームのリーダー等を経て、2007年より現職。日本抗加齢(アンチエイジング)医学会理事。主な著書に『100歳までボケない101の方法』(文春新書)など多数。

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