山田養蜂場運営の研究拠点「山田養蜂場 健康科学研究所」が発信する、情報サイトです。ミツバチの恵み、自然の恵みについて、予防医学と環境共生の視点から研究を進めています。
私たちが毎日食べているものは、私たちの身体をつくり、エネルギー源となり、身体の調子をととのえてくれます。そんな食品の持つ“機能性”の情報を伝える制度がスタートしています。健康づくりのため、信頼できる情報を上手に活かしましょう。
※1 プラセボ:思い込みによる作用をなくすために用いられる偽薬や試験食のこと。
※2 二重盲検法:試験を実施する人にも被験者にも、それが効果を確かめたい成分を含むものか、プラセボかを知らせないで行う方法。
コラーゲンは、身体の中のどこに存在しているかご存じですか?
肌のいちばん外側には、0.1~0.3mmという薄さの「表皮(ひょうひ)」があり、そのすぐ下にある「真皮(しんぴ)」の主成分がコラーゲンです。肌の弾力を保ち、水分をたくわえるために、コラーゲンはなくてはならないもの。しかし、年齢とともにコラーゲン量は減少します。そのため、シワや、ハリのない肌に悩まされることがあるのです。
また、コラーゲンにはたくさんの種類がありますが、それらをすべて含めると、実は、身体のあらゆる部分にコラーゲンが存在しています。
たとえば、骨を鉄筋コンクリートにたとえると、コンクリート部分はカルシウムなどのミネラルでつくられていますが、鉄筋部分はコラーゲンでできています。カルシウムが不足すると「骨密度」が低下し、コラーゲンの状態が悪くなると「骨質」が劣化。両方そろわないと骨の強度は保てません。
そのほか、血管、目、毛髪、歯、軟骨、腱(けん)などでもコラーゲンの役割は重要。肌だけでなく骨や血管など、体じゅうを若々しく保つ機能を担っています。
そんな大切なコラーゲンですから、加齢による減少を抑える方法、補う方法が積極的に研究されています。その内の一つを次に紹介します。
コラーゲンは、分子量の多い「高分子」のタンパク質です。体内に入ると、まず「ペプチド」という形に分解され、さらに「アミノ酸」に分解されて身体に吸収されます。
高分子であるほど、吸収されるまでに時間がかかるため、近年ではコラーゲンを低分子化する技術が進歩しています。
低分子化したコラーゲンペプチドを使って試験が行われました。
被験者は16人の健康な男女です。
16人を「コラーゲンを飲用するグループ」「飲用しないグループ」に分け、飲用グループには12週間毎日、コラーゲンペプチド3gを飲用してもらいました。
試験開始前と、12週間後に、被験者の肌の水分量を調べました。
その結果、コラーゲン飲用グループは、飲用開始前と比べて肌の水分量が12.5%アップしていましたが、飲用しなかったグループは、4.5%ダウンしていました。
このことから、低分子化したコラーゲンを飲用することで、肌の水分量がアップし、ハリやうるおいのある美肌づくりに役立つ可能性があることがわかりました。
オルニチンという栄養素の名は、あまり聞きなじみがないかもしれませんが、私たちの身体の中にも存在しています。
とくに肝臓に多く存在しており、主にアンモニアの解毒を助ける働きをしています。
アンモニアは疲労の原因物質の一つといわれ、オルニチンなどの働きにより、肝臓で害のない尿素に変換されます。この変換の経路を「オルニチン回路」といいます。
アンモニアが過剰にたまってしまうと、全身の疲れを感じやすくなるほか、エネルギー生産や脳の働きなどを阻害します。反対に、アンモニアがすみやかに解毒・排出されれば、疲労回復もスムーズになるのです。
オルニチンは、肝機能を助けるほか、成長ホルモンの分泌を促進する働きもあるといわれています。食品でオルニチンを多く含んでいるものとしては、「しじみ」がよく知られていますね。
そのほか、魚のキハダマグロやヒラメ、チーズ、えのきたけなどにも含まれていますが、含有量はあまり多くありません。オルニチンを確実に摂取したいときは、サプリメントを利用するのもよい方法でしょう。
昔から、「しじみ汁を飲むと二日酔いしない」といわれていますが、オルニチンのさまざまな働きが解明されてきたのは、近年になってからのこと。現在、さらに詳しい研究が進められています。
お酒に弱い人は、アルコールを分解する過程でつくられる「アセトアルデヒド」の分解能力が低く、少量の飲酒でも健康に悪い影響を及ぼすことがわかっています。
この試験では、オルニチンを飲用することで、飲酒による身体へのダメージを軽減できるかを調べました。
お酒の弱い11人を2グループに分け、それぞれ就寝する1時間半前に、体重1kgあたり0.4g(体重50kgの人の場合、ビールを約500ml)のアルコールを飲用してもらいました。
その30分後に、一方のグループには400mgのオルニチンを、もう一方のグループにはプラセボ(※1)を飲んでもらいました。
翌朝、VAS(※ 参照)を用いて調べたところ、オルニチン飲用グループは、プラセボ飲用グループと比較して、「目覚めの気分」「起床時の疲労感」「起床時のだるさ」が軽減されていました。
最近、さまざまな種類の酢を使い分けて、お料理を楽しむ人が増えています。
一般によく使われている「米酢」や「穀物酢」のほか、香りのよい「りんご酢」、コクのある「玄米酢」、酸味がまろやかで香りのよい「はちみつ酢」など、それぞれに個性があります。香りのよいものは加熱せずに風味を活かして、コクのあるものは煮込み料理に……と、個性を活かすことでお料理の幅が広がります。
とくに煮込み料理では、魚や、鶏の手羽など骨付きの肉を煮るときに酢を入れると、骨のカルシウムが煮汁に溶け出し、さらに体内でのカルシウムの吸収もよくなるので、味だけでなく栄養面からもおすすめの調理法です。
また、酢を水やお湯、炭酸、ジュースなどで割った飲みものは、夏バテ対策にもぴったりです。酢が、健康によい多くの作用を持っていることは昔から知られており、疲労回復作用や、便秘解消、血流をよくする、血圧を下げるといった作用があるといわれています。前述のように、カルシウムの吸収を促すので、骨粗しょう症予防のためにも役立つと考えられます。
酢の主成分は、酸味のもとである酢酸やクエン酸です。また、アミノ酸やビタミンB12なども含まれており、どの成分も疲労回復を助ける働きをします。
血圧を下げる作用が、どのような仕組みによるものかは、まだはっきり解明はされていませんが、そのことを検証した試験が実施されているので、次に紹介します。
酢が血圧のコントロールに役立つかどうか、二重盲検法(※2)の試験により検証しました。
正常高値血圧者(正常範囲だが高めの血圧)と、軽症高血圧者(正常範囲よりも血圧が高いⅠ度高血圧者)である98人を被験者としました。
98人を、りんご酢グループ、玄米酢グループ、プラセボ(※1)グループの3グループに分け、それぞれを配合した飲料を毎朝100ml、10週間飲用してもらいました。
りんご酢グループと玄米酢グループは、左グラフのように、飲用前と比較して収縮期血圧と拡張期血圧がともに大幅に下がりましたが、プラセボグループでは血圧の大きな変化はありませんでした。
このことから、酢が血圧のコントロールに役立つ可能性があることがわかりました。
ローヤルゼリーは、ミツバチが女王蜂を育てるために与える“特別食”です。乳白色のとろりとした液体で、そのまま食べると、ピリッとした酸味を感じます。
卵からかえった幼虫は、働き蜂と女王蜂とで違いはまったくありません。同じミツバチとして生まれてくるにもかかわらず、ローヤルゼリーを食べたミツバチだけが女王蜂になるのです。
女王蜂の特長は、卵を産むこと、体長が働き蜂の2~3倍あること、寿命が30~40倍であることなど。
なぜ、ローヤルゼリーを食べたミツバチだけが女王蜂になるのか……
その神秘の理由は、まだ科学的に解明はされていませんが、ローヤルゼリーが人の健康にもよい作用をもたらすことは、古くは古代ギリシャの書物にも記されています。
また、20世紀、ローマ法王が健康のためにローヤルゼリーを用いたことで、ローヤルゼリーの有用性が改めて注目されるようになりました。ローヤルゼリーには、全種類の必須アミノ酸をはじめとする豊富なアミノ酸や、ビタミン、ミネラル、特有成分のデセン酸などが含まれており、「栄養の宝庫」といわれています。
人々は慣習的に、ローヤルゼリーを健康に役立てるよう、生活に取り入れてきました。健康への作用も、生活習慣病の予防・改善や、女性の更年期にかかわる悩みの改善が期待されるものなど、多岐にわたっています。その科学的根拠を確かめるさまざまな研究が行われています。
上述では、お酢の血圧コントロール作用についてみましたが、ローヤルゼリーペプチドにも血圧をととのえる作用があるのではないかと考えられています。ローヤルゼリーペプチドは、ローヤルゼリーを酵素分解して得られたものです。
そのことを検証する試験が二重盲検法(※2)で行われました。
血圧がやや高めである、正常高値血圧者(収縮期血圧130~159mmHg、拡張期血圧85~99mmHg)を被験者としました。
被験者を2つのグループに分け、一方のグループにはローヤルゼリーペプチドを、もう一方のグループにはプラセボ(※1)を12週間、継続して飲用してもらいました。
ローヤルゼリーペプチドを飲用したグループでは、下グラフのように、12週間後に収縮期血圧と拡張期血圧の両方が下がりましたが、プラセボを飲用したグループは血圧の変化はありませんでした。
このことから、ローヤルゼリーペプチドを継続的に飲用することで、高めの血圧を改善できる可能性があることがわかりました。
ローヤルゼリーにはコレステロール値をととのえる作用もあるのではないかと考えられています。そのことを検証する試験が行われました。
高コレステロール血症の患者と、総コレステロール値200mg/dl以上の患者、計49人を被験者としました(※)。49人には1日10gのローヤルゼリーを2週間継続して飲用してもらいました。
※今回の試験は医師の管理のもとで行われています。該当する疾患を持つ患者さんは、担当医にご相談のうえ飲用してください。
飲用開始前と2週間後のコレステロール値を比較したところ、高コレステロール血症の患者は、下のグラフのように総コレステロール値が著しく減少しました。また、HDL(善玉)コレステロールの割合が増加しました。
このことから、ローヤルゼリーの継続的な飲用がコレステロール値の改善に役立つ可能性が示されました。
血液中には、コレステロールや中性脂肪という「脂質」があります。コレステロールは、LDL(悪玉)コレステロールと、余ったコレステロールを回収するHDL(善玉)コレステロールの2種類。悪玉が多すぎたり、善玉が少なすぎたり、中性脂肪が多すぎる状態が脂質異常症です。動脈硬化が進行し、さまざまな病気のもととなるので、早めに改善することが大切です。
上記とは別の試験でも、ローヤルゼリーがコレステロール値にどう作用するかの検証が行われました。この試験では、健康な人を被験者とし、ローヤルゼリーを4週間毎日、飲用してもらいました。
健康な成人男女15人を無作為に2つのグループに分け、どちらも生活習慣は変えずに、一方のグループにはローヤルゼリーを1日6g、4週間継続して飲用してもらいました。もう一方のグループは何も飲用しませんでした。
ローヤルゼリーを飲用したグループでは、非飲用群に比べて総コレステロールが15%減少し、LDLコレステロールが11%減少しました。このことから、ローヤルゼリーの継続的な飲用がコレステロール値の改善に役立つ可能性が示されました。そして、コレステロール値が良好になることで、脂質異常症をはじめとする生活習慣病の予防や改善に役立つことが期待されます。