山田養蜂場運営の研究拠点「山田養蜂場 健康科学研究所」が発信する、情報サイトです。ミツバチの恵み、自然の恵みについて、予防医学と環境共生の視点から研究を進めています。

「健やかに」発刊録

プロポリス研究レポート

血栓を予防したい

プロポリスの健康作用について、さまざまな研究が行われていますが、その中から、「血管と血液の健康」「口腔の健康」に関するものをご紹介します。

「血管と血液の健康」「口腔の健康」に関するもの

心筋梗塞や脳梗塞を引き起こす危険な血栓を防ぎましょう

「血栓」は、血管の中にできる血のかたまりです。
血栓ができる原因はさまざまですが、脂肪やコレステロールを増やす食事、運動不足、喫煙、ストレスなどによって炎症が起こったり血液がドロドロになったり、血管を傷つけてしまうことが一因となります。
血管が傷つくと、その部分からLDL(悪玉)コレステロールが入り込み、血管壁の内側にたまります。コレステロールがたまった部分は、上の図(1)のようにプラークと呼ばれるこぶとなります。
プラークができると血液の通り道が狭くなるので、その先に十分な血液が送られなくなります。また、血管に余計な圧力がかかり、動脈硬化がどんどん進行していきます。そして最も危険なのは、プラークが破れてしまったときです。
プラークが破れると、そこに血小板が集まって血液を固め、図(2)のように血栓ができ、血管をふさいでしまいます。
これが心臓で起これば心筋梗塞になり、脳で起これば脳梗塞になるのです。
血栓をつくらないようにするためには、まず、脂肪の多い食べものや、甘いもの、塩分を摂りすぎないように、食事のエネルギー量(カロリー)に気をつけ、栄養バランスを整えましょう。喫煙も動脈硬化を進行させるので、喫煙者は禁煙を。適度な運動をして、内臓脂肪を減らすことも大切です。
プロポリスの抗血栓作用について調べた研究をご紹介します。

試験方法

(1)ヒト細胞に0.001 ~ 0.005%の濃度のプロポリスエキスを添加したものと、プロポリスエキスを添加しないものをそれぞれ培養しました。
(2)1で培養したヒト細胞に、炎症を引き起こす物質であるTNFαを添加しました。
12時間後、血液の凝固を促進するPAI -1の濃度を測定しました。

結果

プロポリスエキスを添加しなかったヒト細胞はPAI -1が著しく増加しました。一方、プロポリスエキスを添加したものは、PAI -1の増加が抑制されました。また、抑制の程度はプロポリスエキスの濃度に比例しました(図1)。
この試験結果から、プロポリスが血液を固まりやすくするPAI -1の産生を阻害することが確かめられ、血栓の予防に役立つ可能性が示されました(図2)。

PAI-1とは

図1 プロポリスを異なる濃度で添加したときのPAI-1の濃度

図2 炎症刺激によって増加するPAI-1をプロポリスが抑制

血圧をコントロール!

高血圧の人は食事とストレスに注意

高血圧の人は食事とストレスに注意高血圧になると、常に血管に強い圧力がかかり、血管の柔軟性が失われるなどして動脈硬化が進行します。
高血圧の人は食事に気をつけることはもちろん、血圧を上げる一因となるストレスにも気をつけましょう。
気持ちのよい香りは心身をリラックスさせてくれますが、ここでは、プロポリスの芳香と血圧の関係に着目した研究をご紹介します。

試験方法

プロポリスの匂いは種類によってさまざまですが、ブラジル産プロポリスを調べたところ、フラボノイドの量が多いほど芳香性に富むことがわかりました。そこで、ブラジル産プロポリスのエキスを紙に染み込ませて香りをかいでもらい、血圧への作用を調べる試験が行われました。
22人の成人男女を被験者としました。全員ベッドにあお向けに寝てもらい、香りの刺激によって血圧がどのように変化するかを測定しました。その際、被験者にはその香りが何であるかを知らせませんでした。
はじめに血圧が安定するのを待ってから、香りの刺激を与えました。

結果

香りの刺激を与えてから9分後、血圧が明らかに下がりました。また、18~21分後に最も血圧が下がり、血圧低下が一過性でなく、くり返されることが観察されました。
この試験結果から、プロポリスの香りを、血圧の調整をはじめとする健康の維持・促進に役立てられる可能性が示されました。

プロポリスの香りによる血圧降下作用

知覚過敏を歯磨き剤で改善

歯の磨きすぎが原因になることも

知覚過敏は、冷たいものを飲食したり、歯ブラシの先が触れただけで歯に鋭い痛みを感じる症状で、20~40代の女性に多く見られます。
歯磨き剤には、知覚過敏の症状を緩和させるものがあります。そこで、よく利用されている歯磨き剤およびプロポリスの知覚過敏に対する効果を調べた研究を紹介します。

試験方法

20~40代の知覚過敏患者120人を30人ずつ4グループに分け、それぞれ、(1)蒸留水のみ(対照) (2)リカルデント(カルシウムとリンを歯に取り込まれやすい形にした成分)入り(3)フッ化ナトリウム入り(4)プロポリス入り――の歯磨き剤を使用して歯磨きをしてもらいました。
歯の表面が荒れないように注意して60秒間磨く方法で、3カ月間続けてもらいました。
知覚過敏症状が日を追ってどのように変化するかを、①エアジェットスコア(歯の表面に1秒間空気を当てたときの痛みの大きさ) ②触覚刺激スコア(歯の表面を棒の先端でなぞったときの痛みの大きさ)の2種類で測定しました。

結果

どのグループも日を追って知覚過敏の症状が軽減しましたが、最も症状が軽減したのは、プロポリス入りの歯磨き剤を使用したグループでした。
また、歯磨きの日数を重ねるほど症状が軽減されていることから、プロポリス入り歯磨き剤の継続的な使用が有効であることがわかりました。

歯磨きの日数を重ねるほど症状が軽減されていることから、プロポリス入り歯磨き剤の継続的な使用が有効であることがわかりました。

歯磨きの日数を重ねるほど症状が軽減されていることから、プロポリス入り歯磨き剤の継続的な使用が有効であることがわかりました。

歯肉炎を防いで歯を守る

症状の軽い「歯肉炎」の段階で改善を

歯肉炎を防いで歯を守る歯周病は、日本人が歯を失う原因の第1位です。とくにインプラント(※)治療を受けた人は、歯肉(歯ぐき)が細菌感染しやすいため、十分なケアが必要だといわれています。
ポーランドの歯科クリニックと研究機関により、インプラント治療を受けた人が、プロポリス入りの歯磨き剤を使用することで、歯周病の中で比較的軽い症状である「歯肉炎」を予防・改善できるかを調べる試験が行われました。

試験方法

同じ歯科医が治療した患者さん16人を無作為に2グループに分けました。一方のグループにはブラジル産プロポリスエキス3%を含む歯磨き剤、もう一方にはプロポリスエキスを含まない歯磨き剤で8週間、歯磨きをしてもらいました。試験開始前と、開始7日後・8週間後に、患者さんの歯ぐきからの出血と歯のプラーク形成を検査し、健康な歯肉の人の割合を調べました。

結果

8週間後、プロポリスエキスを含まない歯磨き剤を使用したグループは、出血の少ない健康な歯肉の人が60%台だったのに対し、ブラジル産プロポリスエキスを含む歯磨き剤で磨いたグループは、全員が健康な歯肉になりました。

ブラジル産プロポリスエキスを含む歯磨き剤で磨いたグループは、全員が健康な歯肉になりました

また、プラークの形成にも改善が見られ、歯磨き剤にブラジル産プロポリスを使用することで、歯肉炎を改善し、歯周病を防げる可能性がこの試験により確かめられました。

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