山田養蜂場運営の研究拠点「山田養蜂場 健康科学研究所」が発信する、情報サイトです。ミツバチの恵み、自然の恵みについて、予防医学と環境共生の視点から研究を進めています。
蜂の子は古くから食べられている食品です。現在、よく蜂の子を食べる地域として知られているのは、長寿日本一となった長野県や、そのお隣の岐阜県。佃煮や炒めものなど、さまざまな料理で親しまれています。
蜂の子は元来、貴重なタンパク質源でした。また、薬として用いられてきた歴史もあり、中国最古の薬物書である『神農本草経(しんのうほんぞうきょう)』には、蜂の子は「長期の服用によって肌ツヤや顔色がよくなる」「老衰しない」「頭痛を治す」「衰弱している人や内臓の機能に障害がある人の元気を補う」といった記述があります。
栄養学的にみると、タンパク質、脂肪、炭水化物を豊富に含み、そのほかビタミン、ミネラル、人の体内で合成されないため食事で摂る必要のある必須アミノ酸が多く含まれることがわかりました。次のページから、近年の研究により明らかになってきた蜂の子の作用を紹介します。
加齢に伴う難聴をはじめ、いったん低下した聴力はなかなか回復しません。また、難聴をもつ人の多くは耳鳴りに悩んで病院を受診されます。私はそうした患者さんのために診療を行っていますが、現在の治療法には限界を感じることもあります。一方で、「病院では治らないと言われたのに、サプリメントで耳鳴りが治った、よく聴こえるようになった」という話を耳にすることがあります。
もちろん、すべての人に効果があるとは思いませんが、効果のある人がある程度存在するということは、今の医療がめざす難聴治療とは別の作用が働いたことによる効能ではないかと考え、「蜂の子」を用いて試験を行いました(研究レポート【1】)。
試験の結果、蜂の子を3カ月間継続して飲用した人において、「高い音域の聴こえの改善」が確認できました。人は年をとるにつれて、高い音域のほうから聞こえにくくなります。「サ行」「タ行」などは高い音域なので、「7時(しちじ)」を「1時(いちじ)」と聞き間違えるといったことが多くなります。高い音域の“聴こえ”が改善すれば、聞き間違えが少なくなり、日常会話でのストレスの軽減につながります。
また、この試験では、蜂の子を飲用した人の「ストレスホルモンの低下」も確認されました。難聴があると脳に音が伝わりにくくなり、それを補うため、脳のいろいろな部分が頑張って音を聴こうとします。そのために耳鳴りも強く感じるようになり、疲れやすくなります。聴力が少しよくなるだけでも、脳は疲れにくくなり、耳鳴りによるストレスを軽減できると考えられます。
蜂の子は、難聴・耳鳴りの症状を改善するだけでなく、自律神経バランスを整え、疲労を軽減する可能性も考えられます。これからも研究を続け、健康のために広く役立てていきたいと思っています。
この試験は、耳鳴りを伴う難聴の患者さん60人に協力してもらって実施しました。60人のうち30人に蜂の子カプセルを、あとの30人にはプラセボ(※1)を3ヵ月間継続して飲用してもらいました。それぞれ「蜂の子飲用群」「プラセボ群」とします。試験は二重盲検法(※2)で行いました。
次のような結果が得られました。
蜂の子飲用群では自覚する耳鳴りの大きさに低下傾向がみられましたが、有意な差ではありませんでした。プラセボ群では変化がありませんでした。
質問表に回答してもらったところ、蜂の子飲用群では25項目中「耳鳴りから逃れられないように感じている」「自分一人で耳鳴りを管理するのは難しいと感じている」「耳鳴りのせいで落ち込んでいる」の3項目が改善しました。プラセボ群では改善した項目はありませんでした。
慢性的なストレスがあると、コルチゾールという副腎皮質(ふくじんひしつ)ホルモンが大量に分泌します。そのため、ストレス関連のホルモンバランスが悪くなります。試験では、蜂の子飲用群はコルチゾールの比率が小さくなりました。つまり、ストレスが軽減されたと考えられます。プラセボ群ではコルチゾールの比率は大きくなりました。