山田養蜂場運営の研究拠点「みつばち健康科学研究所」が発信する、情報サイトです。ミツバチの恵み、自然の恵みについて、予防医学と環境共生の視点から研究を進めています。

山田英生対談録
予防医学 ~病気にならないために~

第十四回「老化と歯、目の健康」

健康長寿のカギを握る、歯と目。毎日の手入れと正しい生活習慣で若々しく。

「最近、硬いものが食べられなくなった」「新聞の活字が見えにくい」―。こんな兆候が出たら、歯や目の老化のサインかも知れません。年をとるごとに増える体の変調。中でも大切なのが、歯と目の健康ではないでしょうか。「いくつになっても、自分の歯で食べたい」「できるだけ長く目の健康を保ち、快適な生活を送りたい」。こんな思いは、高齢者なら誰でも抱くはず。歯と目は、生きる力であり、噛む力と視力が十分であれば、活動意欲はさらに高まるでしょう。寿命と老化研究の第一人者で、順天堂大学大学院教授の白澤卓二さん(55)と山田英生・山田養蜂場代表(55)が健康な歯の保ち方や目の老化対策などについて語り合いました。

80歳でも20本の歯を

山田

肥満者いない100歳食事は、よく噛んでゆっくり食べることが大切ですね。でも、噛みたくても歯がないと、うまく食べることもできません。年をとるごとに自分の歯が減っていくことは、とても寂しいことです。いくつになっても自分の歯で好きなものが食べられることほど、幸せなことはないでしょう。
私たちの歯は、親知らずを除くと28本ありますが、自分の歯が20本以上ある人は、60歳で8割弱といわれています。それが70歳になると、約5割に減り、80歳になると3割弱というように、加齢とともに減っていく、と聞きました。いつまでも元気に暮らすためには、自分の歯を維持することが、とても大事なことですよね。

白澤

歯と全身の健康は密接につながっており、歯の健康を損なうと、心身にも悪影響を及ぼしかねません。厚生労働省や日本歯科医師会が推進している「8020運動」は、「80歳になっても自分の歯を20本以上保とう」という国民運動ですが、なぜ20本以上の歯が必要かといえば、20本以上あれば、 ほとんどの食べ物を噛み砕くことができるからです。実際、「20本以上の歯が残っている高齢者は、残っていない人より活動的で、寝たきりになる人も少ない」との報告もあります。

山田

自分の歯がたくさん残っていれば、それだけ食べる楽しみも増えて、活動意欲もわいてくるというわけですね。

白澤

はい。この報告を裏付けるような興味深い研究もあります。東北大学大学院の歯学研究グループが健康診断を受けた70歳以上の高齢者を対象に認知症の程度と残存歯数との関係を調べた調査です。それによると、「正常な人たち」は平均で14.9本、「軽度認知症を疑われる人たち」は13.2本、「認知症が疑われる人たち」は9.4本の歯が残っており、健康な人ほど自分の歯を多く持っていることがわかりました。つまり、自分の歯が少ない人ほど、認知症になりやすいといえますね。

侮れない歯周病

山田

それは、私も聞いたことがあります。高齢になって歯が何本残っているかは、寿命とも関係があり、「残っている歯が多い人ほど寿命が長い」との調査結果もあるそうですね。歯を失うのは、歯周病とむし歯が主な原因といわれています。でも、最近では歯周病が全身疾患の引き金となったり、糖尿病や心筋梗塞などと深く関わっていることがわかってきた、と聞いたことがあります。歯周病は、細菌が原因で歯茎が炎症を起こし、悪化すれば歯を支える骨まで溶ける怖い病気だそうですね。

白澤

その通りです。歯周病は加齢とともに増える病気で、高齢者が歯を失う原因の90%を占めるとのデータもあります。歯周病は初期の段階では痛みがほとんどなく、歯がぐらついて抜けそうになるまで気がつかないこともあります。歯周病を予防するには、食後や寝る前にしっかり歯を磨き、歯垢を取り除くことが大事です。
それでも歯茎が腫れたり、出血するなど歯周病の前段階である歯肉炎になったら要注意です。そうならないためにも、3ヵ月から6ヵ月ごとに定期的に歯科検診を受けてほしいですね。歯が抜けても放置せず、自分に合った義歯(入れ歯)を作ることをお勧めします。しっかりと噛み合った義歯なら、硬いものも噛むことができ、自分の歯に近い効果が得られます。しっかり噛めれば、全身の栄養状態もよくなって脳も活性化されます。

山田

義歯が合うか合わないかは、とても重要なことで、合わないために食べたいものが食べられなければ、その人のQOL(生活の質)が著しく損なわれますね。

白澤

義歯は、ただ作ればよいというものではなく、歯科医院で何回も噛み合わせ具合を調整し、違和感がなくなるまでピタッと合うようにするのが一番です。101歳で亡くなられたプロスキーヤーの三浦敬三さんも総入れ歯でしたが、その調整も、かかりつけの歯科医によくやってもらっていたようです。そのせいか、生前、圧力鍋で丸ごと煮た鶏を、ひと口60回噛んで骨まで食べておられました。

心がけたい口腔ケア

山田

それともう一つ、年をとると、噛む力が衰えると同時に、食べたものを飲み込む力が低下してきます。食べ物をのどに詰まらせて死亡する事故も年間約4000件ほど起きているそうです。私どもでも、数年前からローヤルゼリーやカプサイシン(トウガラシの辛味成分)を使い、嚥下力を回復させるサプリメントの研究開発に取り組み、ようやく完成させたところです。

白澤

そうですか。高齢になると、食べたものが飲み込みにくくなる嚥下障害に陥ることがよくあります。これが原因となって起こるのが、「誤嚥性肺炎」です。食べたものや飲んだものが食道ではなく、気道に流れ込んで起きるのですが、口の中の歯周病菌などが感染して炎症を起こします。ご高齢の方で、肺炎で亡くなる方も少なくないようですが、その多くが誤嚥性肺炎といわれています。特に寝たきりの方は、要注意ですね。

山田

口の中の健康が全身の健康にも影響を与えることを考えれば、日ごろから口の中を清潔に保つ口腔ケアが欠かせませんね。ハチミツには、歯石予防効果のあることが当社の最近の研究結果で明らかになっていますし、口腔内の善玉菌としての乳酸菌の働きなども口の中の健康に大きく関わっていることがわかっています。歯も含めたトータルでの口腔の健康が大切ではないでしょうか。

白澤

その通りです。日ごろから歯の手入れをきちんとすることは、とても重要です。歯は「生きる力」の一つといっても過言ではありません。

山田

今は、私たちが子供だったころに比べると、むし歯もだいぶ減ったような気がします。逆に「80歳で20本以上の歯を持つ人は、3人に1人と、8020運動がスタートした約20年前に比べると、大幅に増えた」と新聞で読んだことがあります。やはり、時々歯科医に歯石を取ってもらったり、定期的に歯科健診を受けるなど歯の健康に関心を持つ人が増えてきたからでしょうか。

白澤

そう思いますね。高齢になっても、ものをおいしく食べるには、日ごろから歯の手入れを怠らないだけでなく、歯の診察や相談に乗ってもらったり、自分に合った義歯を作ってくれる身近な歯科医を持つことが大事です。かかりつけの内科医を持つと同時に、かかりつけの歯科医も、ぜひ持っていただきたいですね。

緑黄色野菜を摂ろう

山田

年をとると、歯と並んで困るのが視力の低下です。加齢に伴う目の病気としては、水晶体が白く濁る「白内障」や目の圧力で視神経が傷つき、視野が狭くなる「緑内障」などがよく知られています。こうした病気も、最悪の場合は、失明につながる恐れもあるだけに注意が必要ですね。

白澤

年齢を重ねると、老眼が進行し、涙の分泌量も減ってきます。涙は目の表面を覆って角膜や結膜を保護してくれますが、分泌量が減ると、目の表面が乾燥し「ドライアイ」になりやすくなります。「目が疲れやすい」「しょぼしょぼする」などの症状があれば、ドライアイの可能性が高いですね。それと、最近、増えているのが「加齢黄斑変性症」です。

山田

私もその病名はよく知っております。この病気は、病名に「加齢」が付く点からいっても、老化と関係がありそうですね。

白澤

網膜の中心部にある「黄斑」と呼ばれる部分に異常が起こり、目が見えにくくなる病気です。おっしゃる通り、加齢に伴う病気で、日本でも寿命の伸びとともに近年、急激に増えてきました。ドライアイをはじめ、こうした目の老化を防ぐには、「目のビタミン」といわれるビタミンAがとても威力を発揮します。目の粘膜や角膜の乾燥を防ぎ、目の疲れや視力の回復に効果があります。たとえば、ニンジンやコマツナ、ブロッコリーなどの緑黄色野菜には、「β-カロテン」が豊富に含まれていますが、これを摂取するとβ-カロテンは、体内でビタミンAに変化します。目の老化対策にはこうした野菜を積極的に摂っていただきたいですね。

肥満者いない100歳

山田

高齢になると、老化現象のせいか体のいろんなところに違和感が生じます。中でも、気になるのが心身の疲れですね。若い時は一晩も眠れば、すぐ回復したものですが、年をとると、なかなか疲れが取れません。疲労が重なり、体が弱ってくれば、他にもいろんな病気が出てきたり、持病が悪化する恐れも出てきます。

疲れた体にアミノ酸

白澤

疲労を溜め込まないためには、早めに休息を取ることです。それには睡眠が一番で、7時間ぐらいはぜひとも確保してほしいですね。実際、「睡眠時間が7時間の人が一番長生きする」との報告もあるほどです。加えて、時間だけでなく、質のよい睡眠をとることも重要です。それには、入浴が効果的です。少しぬるめのお湯にゆったりつかれば、自律神経の副交感神経が優位となり、心身ともにリラックスできます。

山田

そうすれば、寝つきも早く、質のよい睡眠が得られ、快適な目覚めが期待できる、というわけですね。

白澤

はい。それと、疲れた体には「アミノ酸」を補給するのもよいでしょう。アミノ酸がいくつか結合したものを「ペプチド」といいますが、これが豊富に含まれている大豆やモヤシなどを積極的に食べれば、疲労回復にも効果があります。

白澤 卓二(しらさわたくじ)

1958年神奈川に生まれる。東京都老人総合研究所研究員等を経て現職。日本抗加齢医学会理事。専門は寿命制御遺伝子の分子遺伝学など。著書に「100歳までボケない101の方法」(文春新書)など多数。