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山田英生対談録
予防医学 ~病気にならないために~

第八回 「自然と調和した生き方こそが、健康の原点ではないでしょうか?」

第八回 「自然と調和した生き方こそが、健康の原点ではないでしょうか?」

国際紛争や内戦・テロ、そして農薬などによる環境汚染が地球の行く末に暗い影を投げ掛けています。人類に多くの幸福を与えてくれるはずの科学技術の進歩も、近年その矛盾がしだいに明らかになってきました。私たちの命を守る医療も例外ではなく、悲惨な医療事故も少なくありません。また、遺伝子技術や再生医療などの進歩によって、難治性の病気は改善されつつも、そのスピードが現状に追いついていないように思えます。日本の統合医学の第一人者で、東大名誉教授の渥美和彦さん(86)と山田英生・山田養蜂場代表(57)が、統合医療と自然との関わりなどについて語り合いました。

科学だけに頼らず、健康を守る本来の姿「自然に生きる医療」を目指すべき。

「科学」で越せぬ医療の壁

山田

近年、科学技術の発展はめざましく、「科学の力」をもってすれば現代は、何でも解決できる「科学万能の社会」と思っている人も少なくないでしょう。医学の世界も同様で、医療技術の進歩によって、「どんな病気でも治る」と幻想を抱いている人がたくさんいます。その一方で、どんなに科学が発展しても、科学では説明できないことも珍しくありません。先端医療のトップを走ってこられた渥美先生も、科学を超えた不思議な事象に何回か遭遇されたことがある、と伺いましたが…。

渥美

今から20年以上も前、中央アジア・ウズベキスタンの古都、サマルカンドで「国際レーザー医学会」が開かれ、晩餐会のあと、野外でレーザーショーが行われました。11月の凍えるような寒さの中、砂漠の夜空に赤・青・緑の光が乱舞したあと、その光が突然消え、暗闇の中から満点の星が私たちの頭上に降り注いできました。そのとき、「私は、なぜここにいるのか」「なぜ自分は生きているのだろう」といった厳粛な思いがこみ上げてきたのです。「宇宙との一体感」といったらよいのか、実に不思議な境地を味わいました。これを機に、私の人生観、考え方が変わり、「地球のため、人類のために何かをやろう」との使命感が湧き出てきたのを今もはっきり覚えています。

自然の摂理を超える

山田

大自然や、宇宙の偉大さの一端に触れた時、人は「何のために生きるのか?」というような哲学的なテーマに気付くのですね。私も強く共感いたします。宇宙との一体感といえば、伝統医学の中国医学では「人間と自然、宇宙万物はいつも一体となって溶け合い、バランスを保ちながら存在している」という考え方をします。「バランスを保つ」という点では、自然界も人間の生命の世界も同じではないでしょうか。自然界のバランスが崩れれば自然現象に異変が起き、人間のバランスが乱れれば病気になる、という考え方も理解できます。

渥美

確かに東洋医学では、人間には生まれながらにして自然治癒力があり、それが一人ひとりのバランスを保つとされ、そのバランスが崩れた状態を「病気」としていますね。

山田

バランスといえば、養蜂を含む農業も例外ではありません。かつての日本の伝統的な農業は、自然とのバランスを保ちながら里山を中心とした生態系を維持する、持続可能な経済システムでした。そこへ「農業の近代化」を旗印に欧米型の農業が入ってきて、単一の作物を作ったり、殺虫剤を使って害虫を殺し、除草剤で雑草を抑える、といった自然の摂理を無視した人工的な農法が導入されました。その結果、自然界のバランスが崩れ、生態系にも様々な悪影響を及ぼしていると思います。

大量のミツバチが消えた

渥美

自然は、正直ですからね。動物も植物も、お互い助け合って生きている大切な地球上の仲間であり、彼らにも生きる権利や使命が当然あります。人間は、何ごとも人間中心に考えているところに、驕りがあり、誤りがあると思いますね。人間も自然界の一部であり、共存の中でしか生きる道がないことを肝に銘ずるべきです。自然への畏怖、畏敬の念がないと、人間の進歩は望めません。これからの医学も単に病気を治すだけではなく、同時に自然環境にも配慮するといった視点が必要になってくるでしょう。ところで、数年前「大量のミツバチが、ある日突然消えた」というニュースが世界を駆け巡りましたが、真相はどうなんですか。

山田

2006年秋以降、全米各地で大量のミツバチが失踪し、被害は22州に及び、その数は全米で飼育されているミツバチの約4分の1にも達した、といわれています。その後、ヨーロッパにも飛び火し、日本各地でも多くのミツバチがいなくなりました。大量のミツバチが突然失踪するという不可解な現象は、「蜂群崩壊症候群(CCD)」と呼ばれ、その被害はミツバチ産品の生産だけにとどまらず、その受粉に大きく依存している果樹などの農業にも大きな打撃を与えました。この世からミツバチがいなくなったら果樹栽培を中心とする人類の持続可能な農業生産は、成り立たなくなりますね。

渥美

花から花へとミツバチが飛び回る姿は、私たちが日常見慣れた光景です。なぜ、いなくなったのですか。

環境汚染の怖さを警告

2014年に発表された健康とされる基準範囲

山田

原因としては、ミツバチに寄生するダニ説から携帯電話の電磁波説、遺伝子組み換え作物説までいろいろ取沙汰されましたが、ネオニコチノイド系の農薬によるのではないか、と考えている人が多くいます。実際、ヨーロッパではネオニコチノイド系の新農薬が「人の脳や神経の発達に悪影響を及ぼす可能性がある」として2013年12月から使用禁止となっているほか、米国のオレゴン州やワシントン州などでも同様の動きが広がっています。

渥美

そうですか。ではなぜ、ミツバチが農薬の影響を受けやすいのですか。

山田

ミツバチには巣から飛び立った仲間が戻ってくると、その体を一斉に舐め合う習性があります。畑や田んぼなどで農薬に触れて戻ってきたミツバチを舐めると、他の仲間もみんな農薬の影響を受けてしまうのです。ネオニコチノイド系農薬は、「ネオ」(新しい)、「ニコチノイド」(ニコチン様物質)の名前の通り、昆虫の神経を攪乱させることで毒性を発揮するものです。ミツバチは自然環境の変化や環境汚染に敏感な生き物なので、自分の死をもって私たち人類に農薬の怖さを教えてくれたのかも知れません。

渥美

ミツバチが大量に消えた、という現象は、農薬汚染、環境破壊の深刻さを人間に警告しているようにも思えますね。身近な例で言えば、私たちの身体からも日々サインが発せられ、そのときの体調の変化などを知らせてくれています。そのサインを一人ひとりがどう謙虚に受け止めるかによって、その後の状態が変わってくるでしょう。

山田

そう思いますね。私自身も養蜂業に携わりながら、自然環境や生命の大切さをミツバチから教えてもらいました。今、地球上には温暖化や森林の減少、砂漠化、大気汚染などの深刻な問題が山積し、多くの人たちが地球の行く末に漠然とした不安を抱えています。わが国にも最近、中国からのPM2.5(微小粒子状物質)や酸性雨などが突然国境を越えて飛来し、重大な影響を与えています。また、国内各地でも森林が荒廃し、蜜源植物が以前に比べだいぶ減ってきました。自然環境とは切っても切れない養蜂に生きる私たちは、「かつての豊かな自然環境を取り戻したい」と会社を挙げて様々な環境保護活動に取り組んでいます。国内はもちろんですが、中国・内モンゴル自治区やネパールなどでの植樹活動は、開始以来すでに10年を超えました。

自然との調和を目ざす統合医療

渥美

それは、すばらしい取り組みですね。木を植える活動は、森林の減少だけでなく、温暖化や砂漠化を防ぐためにも、欠かせません。先ほど、山田さんが指摘されたように地球上には深刻な環境問題が山積し、このままでは地球の正常な働きも、すべての生き物が生き延びるための資源も、いつまで持つかわかりません。危機的な状況にある地球を救うためには、いますぐ手を打つ必要がありますね。

山田

おっしゃる通りです。自然との関わりが深い養蜂も、農業の一つですが、ただ農業は、耕しながら自然を開拓する「アグリカルチャー」であるのに対し、養蜂は、耕さずに自然と共存する「アピカルチャー」です。いわば自然と調和する生き方ですね。私は、21世紀に必要な人類の文化はアピカルチャーに象徴されるような自然と調和した生き方だと考えます。これからの医療も、自然との調和をめざす統合医療に流れが向かうのではないでしょうか。

渥美

これまでの医学は、例えばクローン技術などに代表されるように科学技術優先の方向に走ってきました。しかし、人間も地球という自然があるからこそ存在し、自然や生命と調和することが求められているのではないでしょうか。

いま、政府や医師、市民の動きを見ていると、統合医療に関心が高まっているように感じます。それは、忘れかけた「医学の本質とは何か」を一人ひとりが考え始めたからではないでしょうか。私は、すべての人間には幸せになれる権利と地球に貢献する義務があり、それを支えるのが「真の医療」だと考えています。そのためにも、「人間と自然」との調和、「伝統と革新」を融合する統合医療の視点は、これからの時代には、とても大切だと思っています。

山田 英生(やまだ・ひでお)

山田 英生(やまだ・ひでお)

山田養蜂場代表:1957年岡山に生まれる。1983年に家業の養蜂場を継ぐも、厳しい経営環境の中、活路を通販に求め、現山田養蜂場を築く。予防医学の観点から健康食品の開発をしている。みつばち健康科学研究所・免疫分析研究センターなどの機関を持ち、研究活動に力を入れている。また、自然保護や教育メセナに積極的に取り組んでいる。

渥美 和彦(あつみ・かずひこ)

渥美 和彦(あつみ・かずひこ)

(財)渥美和彦記念未来健康医療財団理事長・日本統合医療学会名誉理事長・東大名誉教授:1928年大阪生まれ。1954年東大医学部卒業後、人工心臓やレーザー治療などの研究に取り組む。1984年、人工心臓を装着したヤギの生存世界記録を達成。東大医学部教授などを経て現職。

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