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山田英生対談録
予防医学 ~病気にならないために~

第六回 「未病のうちは自分で、病気になったら病院で」

第六回 「未病のうちは自分で、病気になったら病院で」

食生活の変化やストレスの増加などに伴って近年、生活習慣病や心の病、アレルギー疾患などが急激に増えてきました。こうした現代病の中には、発病してから手を打っても完治しにくい疾患も多く、病気になる前の未病の段階でしっかりとその芽を摘み取ることが重要といわれています。こうした未病治療に秀でているのが、伝統医学の一つ、中国医学。未病を治すには、どうしたらよいか。統合医療の第一人者で、東大名誉教授の渥美和彦さん(86)と山田英生・山田養蜂場代表(57)が語り合いました。

予防医学の鍵をにぎるのは、一人ひとりの心がけ。

医療もボーダレス時代

山田

「最近、疲れが取れない」「体がだるい」「よく眠れない」—など体の不調を訴える人が、増えているとよく耳にします。病院に行き、「異常はありません」といわれても、どこか体調がすぐれない。こんな人が多いようです。

渥美

確かに多いですね。昔は、「健康」と「病気」は、対極の関係にあったのですが、今は、その境界が曖昧になり、医療の世界もボーダレス化しています。「健康」「病気」のどちらともいえない半健康、半病人の人が少なくありません。例えば、「なんとなく体がだるい」、「元気が出ない」などの不定愁訴や「ストレス病」はもちろんのこと、花粉症やアトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患も、そうですよね。私たちの体調は、常に揺らいでいて、「体調万全」の状態などはほとんどない、といっても過言ではありません。人間の体や心は、調子のよい日もあれば、よくない日もある。それが普通なんです。完璧な健康なんて、幻想にすぎません。

山田

私たちには、「健康でなければ病気、病気でなければ健康」と単純に決めつける節がありますね。体調がよくなくて、目がショボショボしたり、体がだるいなどの自覚があって病院で診てもらったら「異常なし」といわれたり、はっきりした病名が告げられないことも少なくありません。一定の症状の有る無しのみで病気を判断し、その前の段階である未病を診ることに極めて弱いのが、現代の医学だという気がします。

「聖人は、未病を治す」

渥美

なるほど。「病気ではないけれど、健康でもない状態」を中国の伝統医学である中医学や漢方医学では、「未病」と呼び、この未病の段階で治療することが大切だと言い伝えられてきました。未病とは、文字どおり、「まだ病気になっていない状態」のこと。つまり、まだ発病していないが、いつ発病してもおかしくない半健康人の状態といってもよいでしょう。そのまま何もしないで放っておけば、確実に病気に向かう可能性が高いですね。

山田

中国最古の医学書である「黄帝内経」には、「聖人(名医)は未病を治す」と書かれています。黄帝内経は、後漢時代に著された、といわれていますから、今から約2000年も前に、未病の考え方が中国にはすでにあったことになりますね。その考えは、やがて日本にも伝わり、江戸時代の儒学者、貝原益軒が著した「養生訓」でも未病について触れている、と聞きました。中医学は、病気にならないための予防医学を生活の中に取り入れた「養生医学」といわれていますが、やはり、病気を防ぐには日頃からの養生が何よりも大事なんですね。

渥美

これからの医療のあり方として、「予防医療」「セルフケア」が大切になると私が考える理由も、そこにあります。私たちの体は、ある日突然、糖尿病や心筋梗塞、がんなどになったりするわけではありません。こうした病気を発病する前には、必ず未病の段階があり、この段階で体の変調に気づき、生活習慣を見直すことなどによって病気の芽を早めに摘み取っておけば、大事には至ることはないでしょう。この未病を自分なりにきちんと把握し、病との距離を測っておくことが、大病を避け、元気に生きていくためには重要だと思いますね。

体の悲鳴に耳を傾ける

山田

本当にそう思いますね。私たちは、日頃、「頭が重い」「イライラする」「よく眠れない」などの症状があっても、生活するうえで特に問題がなければ、病院にも行かず、症状のみを抑える市販の薬を飲む程度で、そのまま我慢する人がほとんどでしょう。でも、こうした不快な症状は、病気の前段階である未病のサインかもしれません。そのまま放置すれば、大病に至ることだってないとはいえません。そうならないためにも、自分が自分の体の主治医になって、こうした体の悲鳴や危険なサインにしっかり耳を傾け、病気になる前に早く手を打つことが大事ですよね。でも、治療を主な目的とした西洋医学では、発病する前の未病には対応しにくいといわれています。その点、中医学などの伝統医療は、私たちが本来持っている自然治癒力を高めることで病気になりにくい体をつくる生活医学ですから、未病を治すには西洋医学よりも向いているのではないでしょうか。

渥美

おっしゃる通りです。先ほど私は「未病は自分なりに把握して、病との距離を測っておくことが大事」といいましたが、例えば、頭痛一つとっても、どこまでが「未病」の範囲で、どこから「病」になるのか、日頃からわかるように注意を払うことがセルフケアを進めるうえで大切になってくるでしょう。そして、自らの治癒力を生かし、「未病」の段階で、病気の芽を摘めば、医療費の抑制にも地球資源の有効活用にも役立つと思いますね。

気をつけたい 3つの変化

山田

私たちが普段から健康を管理するうえで、どのような体の変化に気をつければよいでしょうか。

渥美

3つあると思いますね。まず、1つめは、「急激な体重の減少」です。例えば、いつもと変わらない食事をしているにもかかわらず、体重がいつもより1割程度、減ってしまった場合などですね。これは、初期のがんや甲状腺などの病気にも見られる症状ですから要注意です。そして、2つめが「頭痛」です。一口に頭痛といってもいろいろあり、風邪からくるもの、眼精疲労によるもの、二日酔いのときに起こるものなど実にさまざまです。ほとんどの場合は、ちょっと眠るか、市販の薬を飲めば治りますが、中には命にかかわる病気が背後に隠れている怖い頭痛もあります。この場合、脳や神経に異常をきたしていることが考えられ、そのサインとして頭痛が出てくるんですね。

山田

「頭痛なんて大したことないよ」と軽く考えていたら、大変なことになりますね。

渥美

そうですよ。そして、3つめが「手足のしびれ」。これは、血行が悪くなると起こりますが、大抵は一過性のもので、特に心配はいりません。でも、それが体の右側か、もしくは左側だけに出る場合、または手と口だけに現れるときは、脳神経系の病気の可能性があり、警戒する必要がありますね。

日頃から未病と向き合う

山田

こうした症状が出たら、どうすべきですか。

渥美

この3つは、病気の基本的なサインです。自分で安易に判断せずに、速やかに病院に行くべきですね。私は、「医者の世話にならない生き方」を提唱していますが、だからといって「何がなんでも医者の世話になるな」「自分の面倒は自分で見ろ」といっているわけではありません。もっと柔軟に考えて、体調が「未病」の範囲を越えてしまったら、迷わず病院に掛かるべきでしょう。症状がひどくなっても病院にも行かず、行ったときにはすでに手遅れで取り返しのつかない状態になっていた、という痛ましい話もときどき、耳にします。だから、「未病のうちは自分で、病になったら病院で」がキーワードになりますね。

山田

何がなんでも「自分で健康を管理する」ということではなく、そのときの症状に合わせ、自分にもっとも合った治療法を選択する、ということですね。これこそ、統合治療の実践ではないでしょうか。

渥美

そう思いますね。日頃から、体と向き合うようにしていれば、それだけ病院の世話になることも必要最低限で済むと思います。私が財団を設立し、健康の重要性や病気予防の大切さを訴えているのも、そのためです。

山田 英生(やまだ・ひでお)

山田 英生(やまだ・ひでお)

山田養蜂場代表:1957年岡山に生まれる。1983年に家業の養蜂場を継ぐも、厳しい経営環境の中、活路を通販に求め、現山田養蜂場を築く。予防医学の観点から健康食品の開発をしている。みつばち健康科学研究所・免疫分析研究センターなどの機関を持ち、研究活動に力を入れている。また、自然保護や教育メセナに積極的に取り組んでいる。

渥美 和彦(あつみ・かずひこ)

渥美 和彦(あつみ・かずひこ)

(財)渥美和彦記念未来健康医療財団理事長・日本統合医療学会名誉理事長・東大名誉教授:1928年大阪生まれ。1954年東大医学部卒業後、人工心臓やレーザー治療などの研究に取り組む。1984年、人工心臓を装着したヤギの生存世界記録を達成。東大医学部教授などを経て現職。

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