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「健やかに」発刊録

健やかに 2015年4月号 バランスの乱れは健康の乱れ?!中医学に学ぶ食養生で病気を未然に防ぎましょう

バランスの乱れは健康の乱れ?!中医学に学ぶ食養生で病気を未然に防ぎましょう

現代社会に生きる私たちは、環境や食生活などの変化によって知らぬ間に、体のバランスをくずしてしまいがちです。 「食」と生活習慣でバランスの乱れを整え、病気を未然に防ぐことこそ、いちばんの健康法です。

バランスはとれていますか?

毎日食べるものでバランスを整え、病気を未然に防ぐ

中国の伝統医学である「中医学」では、健康とは、「陰陽のバランスがとれた状態」であると考えています。しかし、このバランスは年齢によっても変化しますし、自分を取り巻く環境の影響も受けています。また、その人が生まれ持った体質によっても、どちらかに偏りやすいというような傾向が現れます。
バランスが偏ってしまったときは、「食」によってそれを調整できる――中医学ではそう考えています。体は、食べたものによってつくられているからです。

バランスが大きく乱れてしまったときは漢方薬の助けを借りますが、そうなる前に、毎日食べるものでバランスを整えて、病気を未然に防ぐ――これが、中医学の〝医食同源〟の基本の考えです。

陰とは 陽とは

陰陽のバランスを整えましょう

現代人は「陽」が多すぎてストレスに?

健康の基本である「陰と陽のバランス」とは、どのように保たれているのでしょうか?
自然界のものごとはすべて、陰と陽に分けられます。「陰」は、月、夜、暗さ、寒さ、冷たさ、下降、休息など。「陽」は、太陽、昼間、明るさ、暑さ、熱、上昇、活動など。
一見すると、陽ばかりに長所が集まっていて、陰は悪いことのようなイメージを持つかもしれません。けれども、活動するばかりで休息をとらなければ、健康を損ねてしまいます。また、桜の花が冬の寒さを経なければ、暖かくなっても開花しないように、人の体にとっても「寒」「暖」の両方が必要なのです。
現代社会に生きる私たちは、「陽」に傾きすぎているのかもしれません。夜になっても明るく、冬も寒さを感じずに過ごし、夏も汗をかかずに過ごす……。そうした生活は、知らず知らずのうちに、私たちの心身にストレスをかけているかもしれないのです。「陰」と「陽」は、両方が等しくあって、はじめてバランスがとれるものです。ストレスから体調をくずしてしまったようなときは、仕事や人間関係などのストレスだけでなく、自然に反するような生活がストレスになっている可能性もあります。
夜更かしをしないように生活のリズム整えたり、この特集を参考にして自分の体質や体調に合った食事をすることで、バランスのとれた健康な毎日を手に入れましょう。

桜が咲くのは、寒い季節があるから

食べものの「五性(ごせい)」や「五味(ごみ)」がバランスの調整に役立ちます

体のバランスは、食べものによって整えることができると述べましたが、それは、どんな方法によるのでしょうか?

五性

まず、食べものには、それぞれ体を温める性質や、冷やす性質があります。その性質を度合いによって熱性、温性、平性、涼性、寒性の5つに分類したものを「五性」と呼んでいます(下表参照)。
体を温めたいときは、熱性や温性の食材を摂るといった目安にしたり、寒性の食材を摂る際に、熱性や温性または平性の食材を合わせることで体が冷えるのを防ぐ――というように食事に応用します。

たとえば、夏が旬のなすは、体を冷やす「涼性」の食材です。暑気あたりをしたときなどは、体の熱を冷ましてくれるのでおすすめですが、体を冷やしすぎたくないときは、「熱性」の食材であるとうがらしを加えて料理するといいのです。

表


五味

食材にはまた、味に基づいた5つの分類があり、「五味」と呼んでいます(下表参照)。

酸<サン>、苦<ク>、甘<カン>、辛<シン>、鹹<カン>(塩味)の5つですが、実際に舌で感じる味だけでなく、その食材が持っている働きを含めて分類されています。
五味もまた、体を温めたり冷やしたりすることに関連していますし、次に説明する「気・血・津<しん>」という、人の体を構成する3つの要素とも深くかかわっています。
五性や五味を毎日の献立づくりに活かせば、体のバランスを健やかに整えることができます。

表

健康な体は、「気・血・津<しん>(水<すい>)」がスムーズにめぐっている

中医学に基づいて、さらに詳しく見ていくと、人の体は「気」「血」「津(水すい)」の3つで構成されています。

は、体を生かす生命力であり、血と津を体じゅうにめぐらせる原動力、または血と津をのせて体のすみずみに運ぶ運搬トラックのようなものでもあります。

は、細胞一つひとつの栄養となるもの。

は、血液以外の水分で、リンパ液、唾液、胃液など体液のすべてです。
健康であるためには、この3つがすべて不足することなく、滞ることもなく、体じゅうをスムーズにめぐっていることが大切です。

が不足すると胃腸の機能が衰え、疲れやすくなり、免疫力も低下します。気のめぐりが悪いと、おなかや胸が張り、ため息やゲップ、おならなどがよく出るようになります。精神的にはイライラして怒りっぽくなり、長引くと鬱(うつ)になることもあります。

が不足すると、顔色が悪くなり、髪がパサつき、こむらがえり、不眠などの不調も現れやすくなります。血のめぐりが悪いのは瘀血(おけつ)といい、ドロドロになった血液が肌をくすませ、肩こりなどがひどくなります。

は体を潤わせているので、不足すると肌が乾燥し、咳、のどの渇きなどの不調が起こります。津のめぐりが悪くなると、余分な水分がたまってしまい、体をむくませます。
こうした不調が現れたときは、原因となっている生活習慣を改めるとともに、足りないものを補い、滞ったものをめぐらせる食べものを摂ることが、バランスのとれた健康な状態に戻るのを助けてくれます。

気が低下すると、疲れやすくなり、免疫力も低下

気のめぐりが悪いと、イライラしたり、長引くと鬱になることも

血が不足すると、髪にも栄養が行かず眠りも浅くなる

血のめぐりが悪いと、肌はくすみ、こりや痛みに悩まされる

津が不足すると、体はカサカサに

津のめぐりが悪いと、体がむくみ、だるくなる

あなたのバランスを整える食養生

"肝心要(かんじんかなめ)"という言葉がありますが、「老化防止(アンチエイジング)」という点から見たときに、中医学でとくに重要だと考えているのは「肝腎」です。
とくに腎(腎臓)は、髄<ずい>(骨髄<こつずい>・脊髄<こつずい>)をつくるとされ、成長、生殖、老化と深くかかわっています。また、水分代謝を調整し、骨の形成や、脳の働きにもかかわっています。
肝(肝臓)は、血をたくわえ、気と血をめぐらせる働きを持っています。また、目や筋肉の機能にも深くかかわっています。
年齢や体質、季節によって、どんなものを食べたらよいのか。食事をつくるときは、食材の性質も考えながら丁寧につくり、食べるときには感謝の気持ちを持っていただくことから食養生を始めてみましょう。

老化防止(アンチエイジング)には

「腎」の働きを助けてくれるものを積極的に摂りましょう。
また、タンパク質を意識してしっかり摂ることも大切。白身魚など胃に負担をかけないものや、卵などがおすすめです。
高齢になると、個人差が大きくなり、食が細くなる人が多い反面、ほとんど変わりなく食べられる人もいます。食が細い人は消化器の働きが弱っているので、消化がよくて栄養価の高いものを食べることがポイントです。

イラスト

気のふさぎや、イライラには

イラスト気持ちがふさぐときや、イライラするときなど感情が乱れているときには、「気」のめぐりをよくするものを摂りましょう。とくに香りのよい食品は、気持ちを晴れやかにしてくれます。ほかには「ゆり根」も、不安を取り除いてくれる食品です。
また、カルシウムも気持ちを安定させるために大切。イライラするときはカルシウムが豊富で、体にこもった熱を取ってくれる水菜などがおすすめです。

冷え症には

イラスト冷え症にはさまざまなタイプがありますが、まず、体や胃腸を冷やさないことが大切です。冷たい飲みもの・食べものだけでなく、生野菜や刺し身なども避けたほうがいいでしょう。その上で、体を温める食材と、気や血のめぐりをよくする食材を組み合わせて摂るようにしましょう。
また、運動をして熱をつくることも大切です。あまり体を動かせないという人も、家の中を歩くだけでもいいので、少しでも多く体を動かすようにしましょう。

春の食養生

春は、山菜、うど、ふき、よもぎなど、「苦」の味の食材が旬になる季節です。「苦」の味のものは便通を促進するなどして、冬の間にため込んだ不要なものを排出する作用があるので、春の食養生にとても適しています。
ただし気をつけたいのは、摂りすぎると下痢などを起こしやすいことです。とくに高齢の人は、下痢をすると脱水症を起こしたり、体力を激しく消耗することが心配です。
体にいい食材であっても摂りすぎることなく「ほどほど」にすることが、バランスを保つコツです。

植木 もも子(うえき ももこ)先生

監修
植木 もも子(うえき ももこ)先生
管理栄養士、国際中医師、国際中医薬膳管理師。
「おいしく楽しく賢く健康に」をモットーに、日常に取り入れやすい薬膳や健康料理を提案している。

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