山田養蜂場運営の研究拠点「みつばち健康科学研究所」が発信する、情報サイトです。ミツバチの恵み、自然の恵みについて、予防医学と環境共生の視点から研究を進めています。

「健やかに」発刊録

健やかに 2014年10月号 運動は健康長寿の要(かなめ)!運動できる土台づくりを始めましょう

運動は健康長寿の要(かなめ)!運動できる土台づくり【骨・筋肉・関節】を始めましょう

日本は、世界一の長寿の国。
ただし気になるのは、単なる寿命でなく、健康な寿命です。
心身ともに健康で、自立して生活できる時間を長く過ごすためには、何が必要でしょうか?
第一には、身体機能を衰えさせないための運動。
そして体をつくる栄養のことも考えてみましょう。

運動できる毎日が健康寿命を延ばします

生活習慣病予防も運動が決め手

人生の中で、心身ともに健康に過ごす「健康寿命」は、どうすれば延ばすことができるのでしょう。第一に、病気や、骨折などにつながる転倒事故などの予防、第二に、老化の速度を遅らせることが考えられます。では、具体的には何をすればいいのでしょうか?
人は加齢とともに、さまざまな機能が低下していきます。たとえば、筋力が衰えたり、病気への抵抗力が弱くなったり、記憶力が低下するといったことです。ところが、そうした機能の低下、つまり老化は、誰にでも等しく起こるものではありません。厚生労働省の調べで、要介護認定者の割合は、女性を例にすると、70~74歳は4.7%、75~79歳は11.8%、80~84歳は27.2%、85~89歳は48.0%、90~94歳は68.0%と、年齢とともに顕著に上がっていきます。けれども、80歳でも90歳でも、元気に自立して生活している人は大勢います。年をとることと老化は別のもの、と考えたほうがよさそうです。
さて、運動をすると心身の健康によいことは、医学的に証明されています。筋力の衰えを防いだり、骨の強度の維持といった運動機能にかかわることはもちろん、生活習慣病や、ある種のがん、認知症の予防、そして老化の抑制にも、運動は大きな効果を発揮するのです。

歩くことが少なくなったり、力のいる作業をしなくなったり、体をマメに動かさなくなる・・・といった生活スタイルが、あなたの運動機能を低下させ、健康寿命を縮めているかもしれません。

あなたも運動機能が低下している?

あなたも運動機能が低下している?健康と老化抑制のために欠かすことのできない”運動”ですが、現代の生活スタイルでは、多くの人が運動不足に陥りがちです。特に、仕事を引退したあとなどは極端に運動量が減る場合があるので、注意が必要です。
左の表で、現在のあなたの「運動不足度」をチェックしてみましょう。

運動不足度チェックリスト

ここに挙げたのは、「日常生活動作(ADL)」にかかわる項目です。食事、排泄、衣服の着脱、入浴などの日常生活動作を一人で行える期間が、身体機能面の健康寿命です。これに加えて、精神面も健康であることが必要ですが、運動は脳の健康にも重要な役割を果たしています。
脳の健康については、後のの特集で紹介します。ここからは、運動をするための土台となる「骨」「筋肉」「関節」の健康について見ていきましょう。

骨の健康を維持するには 骨粗しょう症に注意!

骨折→寝たきりにならないために

40歳以上の日本人に関するデータで、「骨粗しょう症」の人は、全国に約1280万人いると推定されています。内訳は、男性300万人、女性980万人となっており、女性は男性の3倍以上です。
骨粗しょう症は、骨が「骨折しやすい状態」になってしまう病気。骨密度と骨質が低下することが原因ですが、女性が男性よりもなりやすいのは、骨代謝にかかわる女性ホルモンが、閉経後にほとんど分泌されなくなるためです。
高齢になってから骨折すると、それをきっかけに、寝たきりや、介護が必要な状態になることがあり、さらに、認知症のリスクも高くなります。骨粗しょう症の予防は、健康寿命のためにとても重要です。
骨を丈夫にするのは、第一に、運動です。また、骨粗しょう症になってしまったとしても、転倒を防ぐために、運動をして筋力をつけることが骨折の予防につながります。
運動習慣がまったくない人は、まず歩くことから始めましょう。そして骨を強くするためには、ある程度の「負荷」が必要なので、階段を昇り降りしたり、その場で軽くジャンプするなど、少し負荷をかけるようにしましょう。
もちろん、骨の材料となる栄養素も大切です。下段の『骨をつくる栄養素』を参考にしてください。

骨をつくる栄養素

骨をつくる栄養素骨を「鉄筋コンクリート」にたとえると、コンクリートにあたる部分はカルシウム、鉄筋はコラーゲンだといわれます。カルシウム(乳製品、魚などに豊富)は骨密度にかかわり、コラーゲン(鶏の皮、牛すじなどに豊富)は骨質にかかわっています。そして骨密度と骨質の両方が骨の強度(骨折しにくさ)を決めるのです。
マグネシウム(ナッツ類、豆類などに豊富)も骨の構成成分で、マグネシウムが不足するとカルシウムが生かされなくなります。
ビタミンD(きのこ類、魚のさけ、いわしなどに豊富)は、カルシウムの吸収を高めます。骨のカルシウムの沈着にかかわるビタミンK(ほうれんそう、大根の葉、納豆などに豊富)も、骨形成に重要な役割を果たしています。

筋肉の健康を維持するには サルコぺニアに注意!

高齢になっても筋力は維持できる

筋力は加齢とともに低下していきます。ただし、すべてが年齢のせいではなく、運動不足によって衰える割合も多いと考えられます。
高齢になっても、スポーツを楽しんでいる人は大勢います。年をとってからでも、体を鍛えることは可能なのです。筋力や体力をどのくらい維持できるかは、生活習慣によるところが大きいといえるでしょう。
筋肉量が減少し、極端に筋力が衰えて、日常の身体動作に障害をもたらす状態を「サルコぺニア」といい、予防医学の観点から、近年、特に注目されています。サルコぺニアは、歩行速度、握力、筋肉量などを測定して診断されますが、兆候があれば、早めに運動や栄養補給などで対策をしていこうという考え方です。
筋力や身体動作の機能が衰えれば、転倒しやすくなります。
70歳を超えると、3人に1人が、年に1回以上転倒し、そのうち5%の人が骨折するといわれています。先ほど述べたように、骨折すると、それをきっかけに寝たきりなどになる人が少なくありません。
また、筋肉が減ると、筋力や身体機能が衰えるだけでなく、糖が代謝されにくくなり、生活習慣病のリスクが高くなるといわれています。運動すること、筋肉の栄養をきちんと摂ることは、あらゆる面から健康長寿のために必要なのです。

筋肉をつくる栄養素

筋肉をつくる栄養素筋肉のもととなるのは、タンパク質。細かくみると、タンパク質を構成している20種類のアミノ酸が筋肉をつくっています。アミノ酸の中で、特に体内では合成されない「必須アミノ酸」と呼ばれる9種類は、1種類でも不足すると、ほかのアミノ酸も十分に活用されなくなってしまうという特性を持っています。そのため、すべての種類のアミノ酸を摂れるように、タンパク質は、肉、魚、卵、乳製品、大豆製品など、さまざまな食品から摂りましょう。
また、タンパク質の代謝には、ビタミンB6(まぐろ、かつお、レバーなどに豊富)やビタミンB12(レバー、さんま、貝類などに豊富)が必要なので、一緒に摂ることがポイントです。

関節の健康を維持するには 変形性膝関節症に注意!

「痛いから歩かない」は悪循環を招く

歩き始めに、ひざが痛むことはありますか?60代以降の、特に女性に多い「変形性膝関節症」は、初期には、動作の始めだけ痛みがあり、そのまま動かしていると痛みがなくなるという特徴があります。その状態を放置していると、徐々に痛みが長く、強くなり、ひざの曲げ伸ばしが困難になり、痛みのために歩けないほどになる……というように進行していきます。
変形性膝関節症の主な原因は、関節部分の骨の表面を覆っている「軟骨」が、加齢とともにすり減っていくこと。体重の重い人や、O脚の人は、関節に余分な負荷がかかるため、変形性膝関節症になりやすいことがわかっています。また、一般的に男性よりも筋力の弱い、女性に多い病気です。
この病気のいちばんの予防法は、運動です。そして変形性膝関節症になってしまったときも、治療のために、運動が欠かせません。痛みが出始めたときに、痛いからといって歩かなくなることが、いちばんよくないことです。歩かなければひざを支える筋力が低下して、さらにひざに負担がかかり、痛みが増す……という悪循環に陥ってしまうのです。軟骨は、わずか3~4mmの厚さしかありません。軟骨を構成する栄養素の補給も心がけましょう。

軟骨をつくる栄養素

軟骨をつくる栄養素軟骨の主成分は、グルコサミンやコンドロイチン。グルコサミンは、糖とアミノ酸が結びついた「アミノ糖」の一種で、体のさまざまな組織をつくる成分のもとになります。実はコンドロイチンも、グルコサミンを原料としてつくられます。グルコサミンを多く含んでいる食品は、カニやエビの殻、軟骨成分(牛すじなど)、ねばねば成分(納豆・山いも・海藻など)です。桜えびなら、グルコサミンを含んだ殻ごと食べられます。
コンドロイチンは、軟骨や皮膚などの結合組織をつくる成分の一つです。不足すると、骨粗しょう症の原因にもなります。コンドロイチンは、ねばねば成分が豊富な納豆、山いも、オクラ、海藻などに多く含まれています。

いますぐ運動を始めましょう!

日常生活で運動量を増やす

現代の生活は、便利になった半面、「運動不足」という弊害を呼び起こしました。家事をするときも、雑巾をぎゅっと絞り、力を入れて床を磨くなど、腕力や足腰を使うようなことは減っています。外出する際も、移動手段が車ばかりでは、意識的に体を動かさないかぎり、運動不足になるのは当然です。
特に上部の「運動不足度チェックリスト」でたくさんチェックが付いた人は、いますぐ体を動かし始めましょう。まず、日常生活でできるだけ活動量を増やすように工夫してみるのも一つの方法です。必要なものを、わざと使う場所とは違う部屋に置き、取りに行くようにする、というようなことでも、1日に歩く歩数を増やすことができます。

ポイントを押さえ、目標を決めて実践!

運動を行うときに心がけたいポイントは、次の3つです。

①定期的に行う。
②継続して行う。
③少し負荷をかける。

「定期的に行う」は、毎日とはかぎらず、運動の効果を考えて行います。たとえば筋肉を鍛える運動は、1日行ったら、筋肉の組織が回復するのを待つために2日休む、という方法が効果的です。また、ほぼ毎日行いたいウォーキングなども、疲れているときは無理をせず、1日休んで疲労を回復させましょう。
ただし、休んだあとに、ずるずるとやめてしまわないように「継続して」行うことが大切。そして、ほんの少しキツイと感じる程度に「負荷をかける」ことが、老化の速度をゆるめてくれます。1日に3000歩を楽に歩ける人は、4000歩にするように、目標を決めましょう。

ポイントを押さえ、目標を決めて実践!

辻 一郎(つじいちろう)先生

監修
辻 一郎(つじいちろう)先生
東北大学大学院医学系研究科公衆衛生学分野教授。
専門は老化・生活習慣病の疫学、健康寿命の研究など。

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