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「健やかに」発刊録

「健やかに」2013年5月号 年齢とともに減ってくる関節のクッション グルコサミン

年をとると悩まされる、ひざの痛み。その多くは、軟骨のすり減りが原因になっています。
軟骨をつくるグルコサミンは年とともに減少しますが、工夫次第で元気なひざを維持することができます。

グルコサミンってどんなもの?

グルコサミンってどんなもの?

「ひざが痛いので、最近はあまり出かけられないんですよ」。ある程度の年齢になった方からは、よくそんな声が聞かれます。
ひざの痛みの原因はさまざまですが、中高年の人に最も多いのは、ひざの骨を覆っている軟骨(関節軟骨)がすり減って起こる変形性膝関節症(へんけいせいひざかんせつしょう/へんけいせいしつかんせつしょう)です。
軟骨は、普通の骨とは異なり、表面がなめらかで弾力性に富んでいます。もしも関節の骨が軟骨で覆われていなければ、骨と骨が接する部分の摩擦はとても大きく、衝撃も吸収されません。軟骨は、骨と骨の間の摩擦や衝撃をやわらげるクッションの役割を果たしているのです。
この軟骨をつくっている主な成分がグルコサミンです。グルコサミンはアミノ糖の一種で、軟骨のタンパク質に多く存在します。関節軟骨を生成、維持するために、グルコサミンは欠かせない物質なのです。

グルコサミンってどんなもの?

年齢とともにグルコサミンは減少

グルコサミンは体の中でつくられますが、その量は年をとるにつれて減っていきます。軟骨がすり減ったのに、グルコサミンが不足して修復できなければ、軟骨の破壊が進んでしまいます。そのまま進行すれば、ひざに変形が生じ、変形性膝関節症という病気になって痛みが起こります。
変形性膝関節症は、初期には、歩き始めなどに痛みを感じてもすぐに治まる程度ですが、骨と骨が直接ぶつかるくらいになると、痛みのために歩くことさえつらくなります。

加齢とともに軟骨がある程度減っていくのは自然なことですが、誰もが変形性膝関節症になるわけではありません。何歳になっても、自分の足で元気に歩いている人は大勢います。“いくつになっても元気に歩ける人”の仲間入りをするためには、どうしたらよいのでしょうか?
下記にそのためのヒントをご紹介します。

グルコサミンの優れた能力

グルコサミンの性質や機能をもう少し詳しくみてみましょう。
グルコサミンは、軟骨成分として関節のクッションの役割を果たすだけでなく、体のさまざまな組織をつくる成分のもとになっています。皮膚や軟骨、関節などに存在し、肌の保水性を向上させることでも知られるヒアルロン酸コンドロイチンは、グルコサミンを原料として体内でつくられています。また血液・血管などに関与するヘパリンやヘパラン硫酸もグルコサミンをもとにつくられます。そのためグルコサミンは、皮膚や血液などにも影響を与えているのです。
グルコサミンの特に優れた機能として、次のものが挙げられます。

●関節の動きをスムーズにする
●血液の流れをよくする
●肌のハリやうるおいを保つ

グルコサミンを食生活に上手に取り入れることが、健康に年齢を重ねる秘訣のひとつといえます。

グルコサミンの優れた能力

グルコサミンの上手な摂り方

グルコサミンは、カニやエビの殻に多く含まれています。桜エビならば、殻ごと食べることができます。そのほか、牛・豚・鶏の軟骨や、手羽先、うなぎなどにも含まれ、植物性食品では、やまいも、オクラ、納豆などのネバネバ食品に含まれています。ただし、こうした食品から十分なグルコサミンを摂ることは簡単ではありません。そこで、これらの食品を摂りつつ、サプリメントで補うことが、上手なグルコサミンの摂り方といえます。
サプリメントをカニやエビの殻からつくるとき、製法によってグルコサミン硫酸塩またはグルコサミン塩酸塩ができますが、グルコサミン塩酸塩のほうが分子が小さく、吸収されやすいと考えられています。
また、グルコサミンはコンドロイチン硫酸と一緒に摂ると、より効果的だといわれます。コンドロイチン硫酸には、軟骨に保水性や弾力性を与える働きがありますが、グルコサミンと同様、年齢とともに体内で生成されにくくなります。


変形性膝関節症に対するグルコサミン塩酸塩の有用性が実証されました

【1】試験対象者は変形性膝関節症の患者

グルコサミンは結合している分子の種類により、グルコサミン硫酸塩、グルコサミン塩酸塩などに分けられます。種類ごとにいくつかの臨床試験が行われており、変形性膝関節症の関節軟骨を修復する効果があることが確認されていますが、ここでは、グルコサミン塩酸塩を用いた研究報告を紹介します。
試験は、変形性膝関節症で整形外科を受診中の患者さん50名を対象に、二重盲検法<※1>で行われました。
50名を3つのグループに分け、それぞれ、1 日にグルコサミン塩酸塩1500㎎を含む液、1000㎎を含む液、グルコサミン塩酸塩を含まない液(プラセボ<※2>)を8週間飲用してもらい、関節の痛みに対する評価を行いました。

【2】痛みや歩行能力が大きく改善

飲用8週間後に各症状の改善率を評価したところ、多くの症状の改善が認められ、特に1500㎎飲用群では、変形性膝関節症の主症状である「痛み・歩行能力」の改善率が78.9%と非常に高い改善効果を示しました (図1)。また、試験を担当した医師による評価は、「1500㎎が優れていた」が70%と高い評価を示しました(図2)。
この試験の結果から、グルコサミン塩酸塩は変形性膝関節症に対して、有用な栄養補助食品として期待できることが示されました。

図1


患者数3000万人ともいわれる変形性膝関節症とは

「寝たきり」にもつながる病気

厚生労働省の発表(2008年)では、変形性膝関節症の患者数は、痛みなどの自覚症状がある人は約1000万人、X線診断による潜在的な患者数は約3000万人と推定されています。変形性膝関節症が重症化すると、歩くことが困難になり、寝たきりにもつながることから、国としても、この病気の予防対策を重要視しています。
変形性膝関節症は、初期のうちは、歩き出すときなどの動き始めに痛みを感じますが、少し休むと痛みが治まり、また歩き出せるため、深刻に考えず放置してしまう人も多いようです。けれども、この段階で何の対策もとらずにいると、関節の変形が進んで体重のかかり方が偏り、軟骨がすり減りやすくなり、どんどん病気が進行してしまいます。
少しでも早く改善すること、また、変形性膝関節症になる前に予防することが重要です。

このような方は注意が必要

教授辻 一 郎先生

監修
東北大学大学院医学系研究科
教授 辻 一 郎先生
専門は、公衆衛生学、リハビリテーション医学。生活習慣病の原因解明とその予防、高齢者の健康増進と介護予防、健康寿命の延長を目指した研究を続けている。

「宮城県北部の涌谷という町では、保健医療福祉の住民サービスが積極的に行われています。この町の65歳以上の方々に対して、私たちは昭和63年に、疾患や生活習慣の調査を行いました。そして、その6年後に運動能力を調査して、健全な加齢を果たしている方(強い運動も可能な方)とそうでない方(運動能力に何らかの制限や障害のある方)とを分けることができました。
その結果、健全な加齢を果たしている方では、以下のような特徴があることがわかりました。まず、週3時間以上の運動習慣、7~9時間程度の規則正しい睡眠、余暇活動の習慣があること。食事では、肉、魚、野菜、果物など、多くの種類の食品をバランス良く食べていること。さらに、「生きがい」を感じて前向きに家族・友人や地域社会とかかわっていることでした。
自分らしい生活を長く続けていくためには、運動をはじめとして、「できないからと諦めるのではなく、今できることで何がしたいか?」をご自身に問いかけ、行動に移して、健康に年を重ねていきましょう。」

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